乳だ。
あの乳を諦めていいのか。もう触れなくてもいいのか。口に頬張らなくていいのか…
コロナでフィリピンが封鎖されて半年後。
封鎖されて1.2ヶ月の頃は、すぐに行けるようになるだろうと思ってはいた。
しかし、世界的なパンデミック具合、各国の入国制限具合を見るに、当分は行けそうにない現実を三井より諦めの悪い男と自負する私もフィリピンのことは諦めていた。
この半年の間に、私の近しいフィリピーナは全滅した。
消滅した意味の大きかったのはやはり当時彼女だったマヤ。
元々連絡不精な彼女とは、私のモチベーションが下がったことで、2日に1回、1週間に1回…と頻度が下がり、完全に連絡を取らなくなるまでに時間はかからなかった。
完全に連絡が途絶えて約1ヶ月ぶりに連絡をよこしたと思えば、最強呪文
『お金ない。死んじゃう。お金くれ』
を唱えてきた。
もう彼女にもフィリピンにもモチベーションが皆無となりつつあった私には、それを払ってまで関係を維持させたいという気持ちはなかった。
「一ヶ月も連絡を全くしないで、いきなりお金をちょうだいって?俺をなんだと思ってるの?1番お金の無心するのに簡単だっただけでしょ?」
そう返信したら彼女からの返信は途絶えた。
マヤと私の関係が終わった瞬間である。
このことに関してはそれから2年経った今でも後悔はない。
ちなみに死んじゃうと言っていた彼女だが、死んでいない。
そのメッセージ後もたまに彼女のFacebookを確認してはみたが、元気に生活している様子がアップされていた。
なんならその一ヶ月後にはプチ旅行したような写真がアップされていた。
現在はマラテのどこかのKTVで元気に働いている。
写真の背景を伺い見る限りは、高級店…たぶんペンギン系列。
マヤ以外の知り合いフィリピーナはいないことはなかったが、私なんて結局客である。
旅行ができない…すなわち客としてポイントを落とさないのと同義で、封鎖後2ヶ月後には全滅した。
202X年。世界はコロナのウイルスに包まれた。モチベは枯れ、関係は裂け、あらゆる(私のつながりがある)フィリピーナは死滅したかのように見えた。
だが、(私の)ピーナは死滅していなかった。
フィリピン世紀末モード 突入
ポコポコチーン。
LINEの着信だ。
相手は…ハナだ。
ハナ…私のコロナ禍前の最後のフィリピン旅は、彼女の取り巻きみたいな男に追われ、命からがら逃げ、最終日はジージックスで韓国人に刺されかけた。
トラブルばかりのさんざんたるものだったが、旅行後思い返してみると、彼女からの裏切り(?)のほうが個人的にはダメージがでかかった。
脳内がエロで満たされているところからの急転落下。
ワンチャン、あの素晴らしい乳をもう一度
と思っていたところからの、ワンチャン男根一刀両断される状況に陥っていたかもしれないのだ。
震える。
そんな心底震えた思いを私にさせておきながら、半年も音信不通のままで、今更なんやねん。金か?金が目当てか?
「こんにちは」
「こんにちは」
「久しぶり」
「うん、久しぶりね」
「元気?」
「元気」
なーにが元気?だよこら。お前が欲しいのは私の元気じゃなくて現金だろうが。舐めプしてんじゃねぇ!!
「話したいことがある」
「何?」
「怒ってる?」
「よくわからない状況で、フィリピン人男性に追われてとんでもなく怖い思いをした。殺されると思った。あなたのせいでね。それで怒らない人いるの?」
「ごめんなさい」
「もう半年くらい前のこと。もういいから。さようなら」
連絡を切った。
しかし、ブロックはしなかった。
それは私の優しさなのかエロさなのか気まぐれなのか、はたまたあの日の真相を聞きたかったのかは定かではない。
多分エロさによるものだ。
それから2ヶ月ほどだろうか。
毎日とまではいかないにしても、しばしば彼女からのメッセージが届くようになった。
とはいえ、会話というよりあいさつ程度のものだ。
が、私はアメーバ、ゾウリムシレベルの単細胞だ。
2ヶ月もの間、絶賛パンデミック中で、なんの見返りもない私に連絡をよこし続けられたことで、以前の嫌悪感が消え去るどころか、彼女に好感さえ抱き始めていた。
そしてある日、メッセージが届く。
「元気?」
「元気。そっちは?」
「元気」
「当分会えるわけでもないのに、よくメッセージくれるね。なんで?」
「あんなことした私は、もうあなたにメッセージさえ送る権利もないと思っていた。でもあなたがどうしても忘れられなかったから」
ゾクゾクすること言ってくれるやん?
「そうか。俺も会いたいとは思うけど…当分は無理だよね」
「うん」
「ひとつだけ聞きたいことある」
「何?」
「あの日、あの男たちと俺に何するつもりだったの?あの男たちは誰?」
「…私の姉のボーイフレンドとその友達」
「姉ってリンのこと?」
「そう」
「で、なんで追いかけてきたの?俺に何するつもりだったの?」
「わからない」
「わからない?なんで?」
「私は紹介してくれと言われただけ」
「紹介?」
「紹介してくれたら、姉の治療費なんとかするって、姉のボーイフレンドの友人が言うから」
「治療費?リンは治療が必要なの?」
「うん…」
「何かあったの?」
「バイク事故」
「バイク事故?」
「姉はバイクの後ろに乗ってて、運転していた人はその事故で死んだ。姉は命は助かったけど、大怪我で…顔もひどく打って、前歯がほとんど折れてしまった」
…なんかフィリピンではあるあるなエピソードだなと思っていたら、追加でメッセージが届いた。
写真だ。
…!!!
そこには顔の大部分を包帯で覆われたリンの顔があった。
日本人は事故や入院など不幸なことが起きた時、その痛々しい姿など写真におさめる人はあまりいない。
しかし、フィリピン人はけっこうする。
ニュースなどで死体の写真などを平気で載せているし、フィリピン人のフェイスブック上には血だらけになった生々しい写真などがけっこう載せられている。
これは日本人とフィリピン人の大きな感覚のずれだろう。
大部分顔が写されていなくても、彼女だとはわかった。包帯を巻かれていない部分も目は真っ赤に充血し、激しく打った跡が非常に痛々しい。
顔だけでいうとハナよりさらに美人な彼女がなんと痛ましい姿になってしまったんだ。
心が締め付けられる。
「…これはひどいね…今彼女は大丈夫なの?」
「歯の治療に長い時間がかかる。お金もかかる」
「そうだよね…それで彼女のボーイフレンドの友達が、俺に会うことを条件にお金を出してくれるって?」
「うん…」
「でもなんで俺?」
「以前からその人には、日本人を紹介して欲しいって言われていた。連絡をした前日、実はあなたのことを偶然街で見かけたの。あなたは日本とフィリピン両方で仕事しているから、いろいろ彼にアドバイスできると思ったから。」
「なるほど。街で見かけていたんだね。だからあんな俺がタイミングよくフィリピンにいる時に連絡してきたんだね。それで?俺を取り逃した後はどうなったの?」
「あなたが去った後、他の日本人を紹介しろって詰め寄られた。でも私も彼がただ話を聞くだけじゃないってわかったから、もう紹介はしなかった」
「そうなんだ。でもそうならそうで、部屋に招く時に紹介したいフィリピン人がいて、協力してあげてって言えばよかったんじゃない?」
「あの時、あなたに送ったメッセージのほとんどは私のスマホを使って彼から送られたもの。冷静に考えれば普通ではなかった。でもその時は、姉の治療費のことで必死だったから、冷静でいられなかった」
「そうか…家族ためにハナなりに必死だったんだね。その気持ちは理解できる。でも俺も訳もわからず追われて、捕まっていたら何されてたかわからない。最悪殺されていたかもしれない」
「ごめんなさい」
「事情は分かった。でもやっぱりまだあなたのことは信用できない。時間が必要。行動で証明して」
「わかった」
訳のわからないフィリピーノたちに襲われかけた真相は分かった。
写真を見る限り、ハナの話は本当だろう。
が、そうはいってもすぐに信用はできないし、そもそも信用したところですぐにフィリピンに行き、彼女に会うことなんてできない。
どちらにしても時間があるのであれば、これからの彼女の行動…といっても今できることなんてコンタクトを取り続けることぐらいだろうが、様子をさらに見ることにした。
そしてそれからさらに半年後。
毎日ではないにしても連絡は続いていた。
ついに許そうと思った。
というより、もうそんな1年以上も前のことなんてどうでも良くなったのだ。
たまに送られてくる彼女の私服でもみじみ出るエロボディ写真に、結局エロが勝っただけだ。
「よくメッセージ送ることを諦めないね」
「だって行動で証明しろって…私が今できることはそれだけだから」
「分かった。もうあのことは水に流す。あなたを信じるよ」
その後程なくして私たちは復縁することになった。
それからさらに1年ほど。
海外旅行の規制緩和。
この一年の間、大きな波乱はなくコンスタントに連絡を取り合った。
復縁はしたものの、あくまでメッセージ上だけのもの。脆いものだ。
このコロナ禍が長引けば自然消滅するだろうと思ってはいたが、よく続いたものだ。
しかし、ついにもう彼女のあの乳は目の前だ。
たまに送られてきていた写真でどれだけエロい想像したものか。
その回数や、両手両足の指では足りないくらいだ。
海外旅行の緩和は6月からだ。
盆にはスケジュール的になんとかなるはず。
そうと決まれば彼に連絡だ。
「はい」
「もしもしレンジさん!海外旅行規制緩和ですよ!!太ってる場合じゃありません!フィリピン行きましょう!!」
外伝完結。
あとがき
オノケンの章外伝、最後までお読みいただきありがとうございました。
この後のハナとの関わりについては、前回の章の通りです。
トータルでいうと約4年越しに彼女と凸凹の関係になることを達成したのでした。
4年か…よく続いたなこうしてみると。
粘着すぎてキモすぎワロタ for 自分自身
それにしてもリンの事故は痛ましいものでした。
フィリピンの交通事情だと、間違いなく大小含め日本とは比べ物にならない数の事故が起きていることでしょう。
車でもフィリピンでは運転したくないのに、バイクでなんて怖すぎますよね。
トライシクルを利用する時もありますが、交通量の少ない道のみでアクセスできる場所に向かう場合に限ります。
フィリピンでは“いのちだいじに”がデフォ戦略であり鉄則ですからね。
まぁ、相方が
ガンガンいこうぜ+バーサク状態
+パルプンテ連唱+ちんちん丸出し
[ちんちん丸出しのところで再生してください]
みたいなトチ狂ったデフォコマンドなので、いつも波乱含みの旅になっちゃうんですけどね。
ちなみに次回旅は2月に予定しています。
1万単位で値動きはあるものの、少しずつ航空券の価格は右肩下がり傾向にあります。どのタイミングで購入すべきか、株取引でもしているように値段と睨めっこしています。
レンジさんに加え、以前少し登場した元会社の先輩、リョウさんにも声をかけています。
リョウさんも仕事はバリバリで、理想的な上司の手本のような方ですが、LAカフェでのB専丸出し、即行動、即デートな姿はネタになるので、ぜひスケジュールをなんとかして私たちの旅に同行して欲しいものです。
さーて、次はどんな旅になるかなぁ。
やっとストーリーが見えましたね。
でも、許すの早すぎますね🤩
真相が分かってないのに🤣
2月は頑張っちゃうんですね✨
許したのは、私ではありません。私の息子が許してやれと言ったのです。息子にそう言われたら仕方がなかったのです。
なるほどなるほど🤔スケベに勝る物は無いという事ですね🤣結果論ですが、普通に姉の友達を紹介されてたらと思うと怖い😅
いや、めっちゃ怖くてちぢこみ上がります…
事故ったって聞いて心配してたけど俺には無心の連絡無かった。真っ先に思い浮かぶ豚だろうに。ってミュートにしてたわ。
次回、オノケン死す!
いや、生きてる…
しかも次回っていつやねん…
そういうことだったんですね。面白く読ませて頂きました。ありがとうございます!
ホントに不思議なのですが僕の周りでも事故や病気で若くして亡くなるフィリピンの方ってめちゃくちゃ多いです。
日本だとこんなに頻発しないのに、、、
事故については向こうの交通マナーを見ていると致し方がない気もしますけどね…ただ、知っている人が巻き込まれたらショックはショックですね…
導入の「乳だ」の文字の大きさに爆笑しました🤣🤣
オノケンさんの乳への執念⁉️⁉️
感服しました❗️❗️❗️
それにしても死んじゃうオカニちょうだい
って言いつつ普通の、いや普通以上の生活してる嬢が多過ぎです😤
つっこんでもらいたいと思って作ったところにつっこんでくれると嬉しいです😆
彼彼女らの生命力は、われわれ温室育ちな日本人よりは上だと思います!