飛行機を乗り逃した…

 

乗れないとわかった瞬間は、冷や汗がどっと吹き出し、全身の力が抜けるような気がした。
その後に訪れた感情はレンジさんに対する怒りだ。

 

事は既に、集合の時間から始まっていた。
いつもであれば、遅刻魔の彼だが、最後の空港へ向かうタイミングでは、時間前に集合するほどきちんと時間は守る人だった。

しかし、今回は、まず集合時間を守らないどころか、遅刻しておきながら、ヘラヘラ顔で「部屋に寄ってく?」なんて世迷いごとを言ってた。あの一連のやり取りで20分はロスしている。
あの時間があれば…

 

飯を食うのもダラダラしすぎだ。
あの時間があれば…

ルーズにも程がある。
今回の乗り遅れに関しては、完全に彼に非がある。

 

「おいゴルァ。とりあえず一発殴らせろや」
「大丈夫よ。彼らはそう言って脅かしているだけ。最終的には入れてくれるから」

 

彼は自信満々にそう答える。
その自信ありげな様子に、臨界点まで達していた私の怒りが少し収まる。

 

「そうですか。ならいいんですが」

 

それからレンジさんによる、交渉が始まった。
色々やっていたし、色々言っていた(コンプラ的なあれで省略します)

 

が…無理だった。
乗せない…と。
何だったんだ、さっきの自信は。

 

無理そうな雰囲気に、怒るエネルギーがないほどに力が抜け、どっとイスに腰を下ろした。
レンジさんは交渉を続けていたが、私は完全に諦めムードで、口から霊魂のようなものを出しながら座っていた…

 

その時、ふと横を見ると、もう1人遅れてきた乗客らしい人物…どうやらフィリピン人のようだ。
彼もまた乗ることを拒否され、タガログ語で交渉を始めた。
フィリピン人ならなんとかなるかもしれない…そんな淡い期待も虚しく、彼も早々に散り、どこかへ行ってしまった。

 

そうしていたら、おそらく私たちが乗るはずだったであろう飛行機が動き出した。
終わった…

以下、レンジさんとセブパシスタッフの会話
※レンジさん泥酔のため、所々噛み合っていないところも多々ありましたので、要約してます。

 

「これから私らはどうすれば?」
「同じ便だと2日後にあります」

 

この“2日後”というワードに、横で聞いていた私は白目になる。

 

「2日後!?いやいや冗談でしょ。無理です。陰性証明だって今日までのやつだし。もっと早い便ないですか?」
「ありません。同じ便でないなら、ここから一度出てもらって、チケットの取り直しをしてください」

 

「じゃあ、ここから出るのをサポートしてくれますか?」
「それは私たちの仕事ではありません。空港職員にお願いしてください」

 

「いや、お願いします。サポートしてください」
「私たちの仕事じゃないので」

 

寝過ごし等で、空港に来ること自体が遅れ、チェックインや出国手続き前の段階での乗り逃しならまだ良かった。

 

何が最悪か…私たちは出国するための全ての手続きを終えているということだ。

 

“一回外に出る”…この状況では、それが簡単なことではないのだ。
空港、セブパシのスタッフなど、関係スタッフを通してでないと、ここからは私たちだけでは出ることができない。
レンジさんはそのことを知っているようで、セブパシのスタッフに何度もお願いしているが、彼らは頑としてそれをしようとしない。

 




 

セブパシスタッフの同行はどうしても不可能のようだったので、諦めて手荷物検査場あたりまで引き返した。
そこにいる空港職員に事情を説明して、ここから出してもらうようにお願いした。

 

しかし…

 

「セブパシの飛行機を乗り逃したのなら、出国手続きの取り消しをしてもらって、一回外に出るのに同行するのはセブパシスタッフの仕事です」
「いや、さっきセブパシの人にお願いしたんです。でも何度お願いしても断られたんです」

 

「セブパシの仕事です。そっちに行ってください」
「いやだから、断られたんです」

 

「セブパシの仕事。それは我々の仕事じゃない」
「お願いします」

 

「そっちに行けって」
「なんでダメなんだ?あんたら空港職員だろ!」
「それは我々の仕事じゃないからだって言ってんだろ!」

 

たらい回しの様相に腹を立て始めたレンジさんと、レンジさんのしつこさと言い方に腹を立てた強面空港職員が言い合いを始めた。

 

「なんでだよ!セブパシが同行しない。空港職員に同行してもらえって言われたからここに来てんだよ。仕事しろよ!」
「仕事はしている。それが俺の仕事じゃないだけだ」

 

「連れ出せ!!」
「俺の仕事じゃねぇ!!」

 

どんどんヒートアップしていく2人。
オロオロしている私。

 

何が怖いって、酔っ払いのレンジさんが空港職員に掴みかかりそうな勢いのこの状況だ。
掴みかかる&暴力を振るおうものなら、レンジさんは確実に連行されてしまう。
そうなったらこの状況で私1人になる。
ラスボスの魔王城の道中で、自分よりかなりレベルの高い仲間が先に死んだ時のような絶望感。

 

そんな状況だけは絶対に阻止しなければいけない。
だが、レンジさんも空港職員もどんどんヒートアップして詰め寄っている。
私もレンジさんには

 

“レンジさん、もう一回セブパシの所に行ってみましょうよ”

 

と、一旦ブレイクするように提案しているが、一向に聞いてくれる気配がない。
このままでは本当にレンジさん掴みかかってしまいそうだ。

そう思っていた矢先、空港職員のある言葉で、レンジさんのヒートアップ具合は一気に収まる。

 

 

果たして無事に帰国できるのか、はたまた2日後まで次の便を空港内で待つことになるのか…あと残り2話で完結します。

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オノケン
オノケンは日本で働く普通の30代サラリーマン。先輩レンジの誘いから、マニラ旅行へ。それ以来、マニラに通うように。趣味はフィットネスで筋肉こそ正義だと思っている。海外旅行はリアルドラクエのため筋トレでレベル上げをしている。 オノケンブログでは、マニラ旅行記やフィリピーナとの恋愛をメインに、英会話の上達方法などを記事としてアップしていきます。

6 コメント

  1. 更新お疲れ様です!
    最近の更新を見ていてオノケンさんとレンジさんがバトルするのかと思ってハラハラしていました😥
    後2話でこの風呂敷がどう畳まれるのか気になります、、、!!

    • いえいえ、なんだかんだでお互いにストッパーあるので、そこまでは行きませんよ😅
      そ。…そんな期待値を上げないでください😓

  2. すごいですね。さすがはわれらのヒーロー、レンジさん(笑)。私の経験上、セブパシは定刻に飛ばない遅れる飛行機会社と思っているのでレンジさんの行動もわからなくはないですがでも、クレマニ主役の何か持ってますね(笑)。わたしも、プエルトプリンセサ旅行中、帰りの飛行機が欠航になったのを知ってアメリカのフィリピンエアに日本用の携帯で当時の彼女に電話してもらいましたがフィリピン人の英語まったくアメリカ人に通じなかった。つたない英語で私が何とか取り直したのを思い出しました。これもすごい経験だと思っていましたが。やりますね(笑)。ほんと次回が楽しみです。ケンさん、絶対できない経験ですね、レンジさんの爆弾は。

    • レンジさんは基本的に足を引っ張ってきますが、なんだかんだでそれ差し引いても一緒に行動する方が面白いんですよね!

  3. 🤣🤣🤣
    いやぁ、笑い事ではないんですけど。
    日程的に2日延ばすのは無理なのですかね?😅私だったらけっこうすぐに諦めてチケット取り直すような…💦
    あと2話かぁ、早いですよ〜😓

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