レンジさんと強面空港職員。お互いにヒートアップし、事態はお互いに詰め寄りながらの言い合いになっていた。
その時、空港職員が言った。

 

「あんた、酒飲んでるだろ?酔っ払っているのに、そもそもなんで飛行機に乗ろうとしている?」

 

確かにその時のレンジさんは、お互いにマスクをしていても匂うほどに酒臭かった。
多少なりとも酒を飲んでいる私でさえそう感じるのだ。完全にシラフな人からすれば、かなりの臭いだろう。

 

「いや…それは…少しだけだよ。少しだけ飲んでいるだけ」

 

お酒に関する職員からの指摘が、自分にとってまずいものと判断したのか、急に言葉が弱まった。

 

「どちらにしても、あんたらがさっき乗り逃したセブパシのスタッフのいるカウンターに行ってくれ。これ以上は何を言っても無駄だ。こちらは何もしない」

 

先ほどセブパシのスタッフには、あれほどレンジさんから何回もお願いしたにも関わらず拒否されたのに、もう一回行ったところで彼らは同行してくれるのだろうか。
先ほどのカウンターまで、また数百メートル歩かないといけないのか…

 

寝不足に加えて、この不安な状況に体が重い…

重い足取りで先ほどのカウンターに行くも、既に誰もいない。

 

「なんだよ。誰もいねーじゃん。遅れた俺らが一番悪いけどさ…さっきの空港職員もそうだが、特にセブパシは対応がクソだな」
「ひどいものですね…どうしろと言うんでしょうね…また戻って空港職員に言いますか?」
「それしかないよな。くそ…」

 

先ほど歩いてきた数百メートルを、また戻る。
セブパシのスタッフはいない。空港職員は“セブパシのスタッフに同行してもらえ“の一点張り…
なにこのたらい回し…詰んでるじゃん…どうしろと言うんだ。

 




 

重い足取りで、手荷物検査場に戻る手前、先ほどのフィリピン人らしき人物がいた。
同じ乗り逃しをしたもの同士だ。それにタガログが話せるなら、この手詰まりな状況を打破できるかもしれない。
そう考えた私は彼に話しかけてみることにした。

 

「あのー…もしかして、ここから出るのを空港職員にお願いしているところですか?」
「はい、そうです。ただ、セブパシのスタッフに言えと言われて、戻ったけどカウンターには誰もいないし、どうしたらいいかと思っていまして」

 

「同じです。私達、タガログ語を話せませんし、難しい英語は厳しくて…できればご一緒させてもらってもいいですか?」
「いいですよ!一緒に出ましょう。すみませんね、日本の空港職員なんかはすごく優しくて丁寧なのに…同じフィリピン人として彼らの対応は恥ずかしいです」

 

話をしてみると、名古屋で英語の塾講師をしている方とのことで、日本語も少しくらいだが話せる。
なぜか日本で仕事をしていて、しかも職業が塾講師というところから得る安心感が半端ない。
今の私たちからすれば、彼は勇者どころの騒ぎではない、神だ。神のような存在の人とダンジョンで出くわした。ということで、彼の名前はゴッドさんとする。

 

それから、ここを脱出する交渉は全てそのゴッドさんにしてもらった。

どの空港職員に言わせても、やはりセブパシのスタッフ同行が当然の流れだそうだ。
何度か空港職員がセブパシのスタッフを内部から呼びに行ってくれたが、なぜか全くセブパシのスタッフは出て来ることがなく、結局、空港職員に同行してもらって外に出ることができた。

 

…セブパシスタッフなんで出てこねーんだよ、出てこいよ。
てか、最終的にセブパシじゃなくて、空港職員同行でも出られたじゃねーか。

 

時刻は8時前…ウロウロして揉めてを1時間以上もしていたのか…疲れた…眠い…本当だったら今頃飛行機の中で爆睡していたはずなのに。

だが、長いのはこれからだった。
帰りの便のチケットの買い直しをしないといけないが、セブパシだけはもう利用したくなかった。
あんな対応されて、黙ってまた利用するのは癪だったからだ。

 

が、結局時間帯や帰着場所でベストはセブパシであると判明し、チケットを買いにセブパシのチケット販売場所へ。
8時に開店のようだが、すでに20名近くが並んでいるという鬼のような状況。

ゴッドさんが、ここに至るまでセブパシのスタッフの怠慢な行動が大いにあったことを伝え、少しでも配慮するように伝えてはいたものの、やってくれたことといえば、少しだけ順番を早めてくれる程度のものだった。

前には10人くらいの人。

それからがまた長い長い待ち時間だった。

 

明日最終回。

予告します!最終回はそんな山があるわけではありません!!

最終回に向けて、期待は上げてはいけません。これはフリではありません。

“何だよ最終回全然盛り上がってこなかったじゃん”って言われない、思われないための保険です。期待しちゃダメよ💖

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オノケン
オノケンは日本で働く普通の30代サラリーマン。先輩レンジの誘いから、マニラ旅行へ。それ以来、マニラに通うように。趣味はフィットネスで筋肉こそ正義だと思っている。海外旅行はリアルドラクエのため筋トレでレベル上げをしている。 オノケンブログでは、マニラ旅行記やフィリピーナとの恋愛をメインに、英会話の上達方法などを記事としてアップしていきます。

6 コメント

  1. 救世主現る🦸‍♂️
    とはいえ、敵ボスは手強かった😅
    コレは大団円に向けて盛り上がってきましたね❗️✨楽しみです🤩🎉

  2. いつも
    楽しく読ませて頂いてます。
    飛行機乗り遅れは、いやですね。しかも、自分の責任じゃないと、むかつきますよね。私なら置いていきましたね😁

    • 今思えば、そういう後悔がほとんどです…ただ、置いていかなかったのは、私の中でもまだ大丈夫という気持ちがあったのでしょう…もっと危機感を持たないとですね!

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