死の恐怖と生の実感ができたトライシクル。
短時間ではあったが、50ペソを支払い、レンジさんの会社へ到着した。
私「おお、なかなか立派なビルじゃないですか」
レンジ「結構良いテナントでしょ?」
私「はい、でも後ろを振り返ると急にスラムですね」
レンジ「うちのオフィスはここの8階だけど、このビルの駐車場では良く発砲音がするのよ」
私「これはまた、さらっと恐いこと言いますね」
レンジ「このへんはちょっとだけ危ないかな」
私「例の場所のときも“ちょっと”とか言ってましたけど、レンジさんの“ちょっと”の基準はだいぶおかしいです」
レンジ「Haha」
ボロボロアパートが立ち並びスラムの気配を背中に感じながら、レンジさんのオフィスがあるビルへ入る。
エントランスのエレベーターから目的の8階へ。
レンジ「おーい、社長様のご帰還であるぞ」(英語)
奥から誰かの気配。
私(心の中)「お餅?....あ、人か」
ナオミ「Sir!!」
ナオミ似顔絵
奥から出てきたぽっちゃりの域は誰の基準であっても超えているだろう女性。彼女の名前はナオミ。
真ん丸とした体形を隠す気もないのか、上は深緑色の肩の部分が空いたちょっとおしゃれな形をしたTシャツ。
ピチピチである。
もし、胸のところにプーマのマークがあったのなら、もれなくプーマのマークがダックスフントになるであろうほどピチピチである。
そしてズボンはジーンズ。バツバツである。タイツかと思わせるほどの足へのフィット感。
おしり、太もも、ふくらはぎ、足首、どこであってもジーンズのみをつまむことなど到底できそうにない。まるで彼女のために作られたオーダーメイド品を思わすフィット感である。
彼女がこのジーンズを身にまとい、そして全力でしゃがみこんだなら、おしりの部分から裂け、常に臨界点に達しているだろうジーンズの繊維たちは、ここぞとばかりに分裂を始め、右部分と左部分に完全に分かれることだろう。
私(心の中)「ぷっ、お餅人間」
吹き出しそうになる気持ちを堪えながら挨拶をする。
ただこのお餅、いやナオミ。太ってはいるが、肌がとんでもなく綺麗である。
ハリツヤがよく、高反発間違いないその肌は、毎日コラーゲンばかりを食べて太ったのかと思うほどである。
ナオミほどの美肌は探してもそうは見つからないだろう。
しかもよく見ると大きく整った目、バランスの良い顔のパーツ。
もしもナオミが痩せたのであれば、かなりの美人になることは間違いないだろう。
よくいう“おしい”子である。
他の従業員も奥の方から4人ほど出てきた。全員女性であるが、なるほど、確かに昼に働く女性だなといった感じである。
レンジ「ちょっと俺も仕事があるから、座って待ってて」
そういうとレンジさんは奥の方に入っていき、私はナオミから出された鬼ほど濃いコーヒーを飲みながら、レンジさんの事務作業が終わるのを待っていた。
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