[レンジブログ 前回のあらすじ]
年末シーズン、クリスマスイブのフィリピンに到着。おすすめホテル紹介。深夜徘徊では、ナイトクラブで怪しい女性にナンパを受ける。
[前回の記事]
【レンジブログ83】12月末のマニラにチェックイン。おすすめホテル紹介。
クレイジーマニラの記事は、実際の旅行や取材を元に記述しています。小説風のストーリ仕立てで記述していますので、過去の記事を参照頂けると話の内容が理解しやすいかと思います。また、登場人物の名前等は仮名を用いているところがあります。
レンジブログを始め(序章)から読んで頂けると幸いですm(__)m
【レンジブログ1】日本人経営者と私、フィリピンでの入国審査へ
レンジブログ第一章は以下のリンクからどうぞ
【レンジブログ33】プライベートフィリピン女性との深夜デート。マラテのディスコ EXKLUSIVE へ
レンジブログ第二章は以下のリンクからどうぞ
【レンジブログ51】マニラのフィリピーナが初めて日本の地方都市に来る
レンジブログ第三章は以下のリンクからどうぞ
【レンジブログ71】マニラでビジネス開始。フィリピーナのコンサルティングで法人設立。
また、オノケン(現在の話)とレンジ(過去の話)のブログは交互にストーリー展開します。登場人物も共通する人が出てくるので、始めから読んで頂けるとより記事の内容が分かりやすいと思います。オノケンブログもチェックしていただければ幸いですm(__)m
【レンジブログ84】マニラのクリスマスイブ。日中は普通に仕事、夜の部は果たして。
到着後の翌朝。
ホテルのベッドで目を覚ました。
時刻は午前9時ころ。
今日はそして、24日、クリスマスイブだ。
ナオミとの連絡では、今日と明日は会社自体は休みにしようということだった。
彼女も他のスタッフも、クリスマスはそれぞれ皆家族と過ごし、その日を祝うと言う。
私はやらなければならい業務が溜まっていたので、クリスマス期間中も一人で出勤することにしていた。
私は部屋で朝食を済ませ、通りに出る。
[滞在先のリヴィエラマンションホテル前]
私にとっては、初めてのフィリピンでのクリスマス。しかし、通りは特に変わった様子はなく、皆忙しそうに学校や職場に向かっているようだった。
私も歩き慣れた道を進み、フラフラとオフィスを目指す。
そして、誰もいないオフィスに到着。
まずは、一人でコーヒーを淹れる。
それを飲みながら、デスクのパソコンに向かい、カタカタと事務仕事をしていく。
また、各顧客へ年末年始の勤務について、挨拶を兼ねて電話やメールで連絡していった。基本的に私はフルタイムでオフィスにいますというもの。加えて「Merry Christmas!」と。
そして、お昼過ぎ、私の私用電話が鳴った。
私「Hello.」(こんにちは。)
マルコ「Good afternoon, Range. How are you?」(こんにちは、レンジ。お元気ですか?)
[マルコ似顔絵]
相手は、マルコだった。
私は、電話越しでも彼女の声を再び聞けることが、とても嬉しかった。その透きとおった声は、私の耳にいつまでも残る。
あー、私は今、天使としゃべっている。これ以上ないクリスマスプレゼントだ。
電話の要件は、彼女の会社が開催する年始のイベントについて。
場所はSMXコンベンションセンター(モールオブアジアの隣)、1月3日から2日間のイベント。各国の製品を会社ごと各ブースにて展示やプレゼンなどを行う商談会のようなイベントだ。
彼女たちの会社の製品もその商談イベントに出展する。そして、マルコがその事前準備と当日運営も含めて、責任者のような立場であり、クリスマスイブの今も大変忙しいとのこと。
私は、その広報の一部と、彼女らが必要としている印刷物やチラシのデザイン等を請け負っていた。
このとき、その依頼の準備はほぼ完了しており、あとは事前にそれらを確認、納品するだけだった。
マルコ「Everything Okay?」(順調ですか?)
私「Yes. I already done. No problem, Malco.」(はい。すでに完了、問題ありません、マルコ。)
彼女は私の返答に嬉しそうだった。
お互い「クリスマスなのに仕事で大変だね。」と励ましあった。
そして、私は何を血迷ったのか、思わずブスなことを聞いてしまう。
私「Malco, if you have time, Let’s go dinner after your work tonight?」(マルコ、もし時間があったら、今夜仕事の後に食事に行きませんか?)
ぶふえぇっ!
言ったそばから、恥ずかしい。顔が燃え焦げるほど恥ずかしい。
マルコ「Ah…」(あー…。)
うおーっ、この日本人、キモっと思われたっ。絶対に引いている。
穴があったら、入りたい。入り込んで、そのまま顔を出さずに生きていきたい。
マルコ「I’m sorry, I’m busy tonight. Because we have dinner with my family in my home.」(ごめんなさい。今夜は忙しいです。家で家族と食事なので。)
ぶふえぇっ!
それはそうでしょう。私は何ということを口にしてしまったんだ。
もう私は地上には戻れない。地底でミミズのように生きていくしかない。
私「Oh that’s nice! Please enjoy your time!」(それは素敵! 楽しんでください!)
精神力をギリギリ保ち、何とか振り絞ったフレーズだった。
もう、マルコに合わせる顔はない。
あまりの大ダメージのため、視力が急に落ちてくる。すでに私はミミズになりかけていた。
今すぐフィリピンから消え去りたい。
マルコ「Yeah, thank you! How about next weekend? After our event?」(ありがとう! 来週末はどうですか? イベントの後は?)
私「What? Dinner? With me?」(何っ? 食事? 私と?)
マルコ「Yes. I wanna have dinner with you also, Range.」(はい。私も食事に行きたいです。レンジ。)
おっ、おう。
耳を疑ったが、聞き返すのも変だ。確かに彼女は、「食事に行きたい」と言ったはず。
おぉー、良かった。
ブスな大砲も思い切って撃ってみるものである。このようなチャンスを得るには、ギャンブル的な捨て身のアプローチを必要とするのだ。
私は「もちろん! 楽しみにしています! メリークリスマス!」と彼女に伝え、このときは電話を切った。
しかし、どうするの?
あんな美人と食事なんて。本当に?
彼女のことは、仕事上の関係だと割り切っていたが、急に女性として意識してしまう。
誘ってはみたが、いざOKのような返答をされると、その場を想像するだけで緊張する。夜も眠れない。食事の場では、おそらく何もしゃべれないし、何も喉を通らないだろう。
彼女と食事に行きたい、猛烈に行きたいが、その気持ちが強すぎて、逆に絶対に行きたくない。
まぁ、来週末と言っていたし。そのころ、お互いに今の会話は忘れているかもしれない。
それに、もしパーリーにビジネス上で、このような軟派なところを知られれば、私は再び大説教を喰らうだろう。仕事上の「挨拶」だと言っても信じてくれないだろう。
うー、やはりパーリーのことが怖い。マルコと次回会っても、食事の件はもう口にしないようにしておこう。風化させるのだ。
私はその後、出来る範囲の業務を終え、一人でオフィスを閉め、帰路に着いた。
時刻は午後8時頃だった。
[マラテ中心部、ベイビューマニラ前]
マラテ中心部に戻ってくると、通りは確かに普段よりは賑やかに感じた。
人々はファッションにワンポイントで赤や白、緑カラーのアイテムを取り入れていたり、店舗のイルミネーションはクリスマスを感じさせるものになっていたりした。
また、サンタクロースの帽子やコスプレを着用している人の姿も目に付いた。
KTVの前に立つ呼び込みの女性やママさんたちも何処かクリスマスっぽい服装。マラテの中心部は確かにお祭りのような雰囲気だった。
[クリスマスシーズンはライトアップしているところも多い。]
その光景を楽しみながら歩く。
皆、クリスマスも仕事しているんだなー、と思いながらホテルへ向かう。
[ホテル横にあるセブンイレブン前]
このコンビニ前には、いつも多くのフィリピン人男性の姿がある。
皆、スマホを触っていたり、談笑していたり。彼らは一体そこで何をしているのだろうか。とても仕事をしているとは思えない。
クリスマスイブのこの夜も、いつもと同様の光景で思わず笑ってしまう。
この人たちは本当に何をここでしているのだろう。
私は、コンビニで夕食と翌朝の食事を購入。いつものように買い物袋を提げ、部屋に戻る。
今夜は、マニラのクリスマスイブ。
フィリピン人の多くは、キリスト教徒。自身の誕生日と等しく、クリスマスを祝う。ほとんどは家族と一緒に過ごし、お祝いする。
そして、おそらくは恋愛の国際Aマッチデー、いや、ワールドカップ開催期間中、しかも決勝トーナメントベスト4以上の戦いが行われる日だ。
世界中はもちろん、近くのホテルやお宅では、さぞ熱戦が繰り広げられることだろう。
そして、たくさんのスーパーゴールが生まれるはずだ。日本も多くの感動ゴールが生まれていることだろう。
私は…。
日本でも一人、このマニラでも一人。
私は純粋な日本人、家系は比較的熱心な仏教徒である。
イブとクリスマス。どちらの夜を「聖なる夜」と呼ぶのかすら知らない。
私にとってクリスマスはただのイベントであり、本来何も関係がない。日本人であれば、むしろ、前日の「天皇誕生日」を大切にすべきだろう。
しかし、私は世間の風潮に簡単に流されてしまう。
クリスマスに興味がないなど、それは完全に嘘である。
恋人と一緒に過ごしたい。それはもう、48時間ビタッとくっ付いたまま過ごしたい。一年で最も一人っきりで居たくない、かつ、一番誰かを想う日である。
そして、私にとって、イブとクリスマスは「性なる夜」なのだ。世界中、一年で最も多くのゴールが生まれる日だと信じている。
猛烈に試合がしたい。ゴールを決めたい。泥臭いごっつぁんゴールで良い。今日か明日、ゴールを決めたい。
あー、マリー。彼女に会いたい。しかし、彼女は今マニラにいない。
今年も寂しく、ホテルで静かに過ごし、クリスマスも過ぎていくのだろうか。
私はこの時、寂しさのあまり「Merry Christmas!」というメッセージを、ラインのコンタクトにあるフィリピーナ全員に送った。
とんでもないブスな散弾銃を撃ったのだ。
代表戦への招集レター、誰かに当たれ!
そして、五分もせずある女性から返信が来た。
女性「Good evening. Merry Christmas. How are you? I’m hungry fufu.」(こんばんは。メリークリスマス。元気? お腹すいた、ふふ悲。」
[次回あらすじ]
クリスマスイブの夜。女性からの返信にレンジはどう返すのか。もちろん、レッツゴーディナーである。