ーー部屋に私、マリー、叔母の三人で戻ってきた。
「Mommy! (ママー!)」
なんとマリアは起きていた。
そして叔母の顔を見つけるとマリーより先にそちらへ抱きついた。
叔母に懐いているのだろう。泣き声交じりだったのがすぐに明るく楽しそうな声に変わった。
「Why are you awake!? (何で起きているの!?)」
マリーが「早く寝なさいって言ったでしょ!」と怒鳴った。
私は驚きながらも「まあまあ。寂しかったんじゃないの」と場をなだめる。
「Sorry mommy! Sorry Waah.. (ごめんなさい! わあぁ……)」
マリアは号泣しながら謝る。しかしマリーは容赦なく責め立てる。
【レンジブログ214】フィリピン婚約者とマカティKTV夜遊び!?
ーーマリアに預けておいたスマホを確認すると何度もマリーへ電話を掛けていたようだ。
それを無視して今まで放置していたマリー。私は彼女に少し不信感を覚えた。
マリーは子育てに厳しい。それは以前から二人の様子を見ていて感じ取っていた。
彼女なりに多分な愛情を注ぎながら決して甘やかさず育てている。社会の荒波を知り尽くした母は娘を強く正しく導くために。
私はマリアの心が疲弊したときの拠り所になればいい。『躾以上虐待未満のスレスレだな』と思うところは時々あったが半分部外者の私はあまり口出しすることが出来なかった。
ただこの時のマリーは流石に言い過ぎだと判断し「マリアは寂しかったんだよ。そんなに怒らないで」と間に入った。
マリーも気を落ち着かせたのかマリアとともにベッドに入り「もう遅いんだから。早く寝なさい」とトーンを下げて頭を撫でていた。
その間叔母は私たちが食べ残したクリスピーパタを無断で喰っていた。
私も小腹が空いたような気がして叔母に加わった。
ーー30分ほどするとマリアの寝息が聞こえてきた。
そっとベッドを出てきたマリー。彼女は人差し指を口に当てながら「さっ、外へ出ましょう」と私たちを促した。
時刻は午後11時。
バーチタワーの下でタクシーに乗った。
何故か叔母も同伴だった。
マリーに「叔母さんは子守で残るんじゃないの?」と小声で聞いた。「いいのよ。ちょっとマカティに行って戻ってくるだけなんだから」マリーは私の心配を他所に運転手へ行先を伝えていた。
助手席に座った叔母は私たちの会話が聞こえたのか「マリアは大丈夫よ。さぁ楽しみましょう!」と鼻歌を響かせる。
そっそんな感じで良いのか?
葛藤が解決しないままマカティのKTVへ向かう。
ーー見覚えのある大箱のKTVに到着。タクシーを降りる。
友人と何度か来たことのあるところだったがここに私の指名嬢は居ない。オーケーだ。
マリーが先導して中へ。
エントランスから通路を進むと奥に広いBOX席兼ステージエリアがあるのだが私たちはその手前のVIPルームに入った。
マリーはここの常連らしく男性スタッフと親しそうに会話して女性の指名を告げていた。
叔母と私は『これから何が起きるんだろう』とソワソワしていた。
そういえばここ…… 思い出した。懐かしいな。初めて訪れたのは526の女性たちと同伴だった。もう三年も前になるのか。
忌々しいインスタ事件が蘇る。
あの時は派手に遊び驚愕の会計になった。しかも当時交際していたマルコに夜遊びがバレてしまった。上手く取り繕ったつもりだが。
また大きな副産物も。メンションを飛ばされたせいで一晩でフォロワーが2,000人くらい増えた。怖くなり後日アカウントは削除した。
時は経ったがあの時接客してくれた女性たちは今どうしているのだろうか。もしかしたら私のことを覚えている人もいるかもしれない。警戒せねば。
ーーマリーの指名した女性が入ってきた。
一人、二人、三人…… 五人。
マリーとハイタッチしている。私と叔母は笑顔で迎えるしか出来なかった。
「He is my husband. (旦那よ)」
マリーが私を紹介すると皆「結婚おめでとう!」と歓声を上げ拍手が起きた。いやいやまだなんですけどね。しかもそれどころではない。
私は目を見開き女性陣の顔面を注意深く観察した。
居ない…… 私と直接面識のある女性は居ないぞ。ひとまずセーフだ。
私は「不束者ですがよろしくお願いします」とお辞儀で応えた。
マリーがパンパンと手を叩き注目を集める。
「Guys! Party night! (てめぇら! 血祭りじゃ!)」
それを聞いた女性陣は「きゃーっ!」と一気にフルスロットル。
まず入口に近かった女性二人が部屋を出ていった。注文を伝えに行ったのだろう。
ーー大量のドリンクとフルーツ盛りが運ばれてきた。しかも女性が一人増えて戻ってきた。なんでさらに増えんねん……
それほど広くない部屋にこの人数。皆とほぼ密着状態だ。
これは……
今夜は……
全員抱いたるわいっ!!(叔母以外)
私はリミットを解除した。
この二年間マリーについては何も助けることが出来なかった。むしろ深く傷付けた。今は彼女の思うようにしてATMだろうと男としての存在意義を示し期待に応える。
そう。二年分の時をこの瞬間で取り戻すんだ。
それらを言い訳にして自分を納得させた。
乾杯の後は記憶が曖昧である。
ベロンベロンに酔っぱらい歌った。
何度も肝に銘じたはずの自制心が吹き飛んだ。だって天国に来たんだもん。
この後早朝便で帰国しなければならないことは頭にあった。苦心した陰性証明の件も。しかしそれらはマリーと叔母に伝えてあったので最悪彼女たちが私をマラテへ連れ戻してくれるだろうと。
いつ尽きるかも分からない命にしがみつくつもりはない。
振り切るんだ。今を生きろ。マニラを満喫しきって廃人と化せ。
まだまだ足りんぞ! 酒、女、飯!
と言いつつ、隙あらばマリーの目を盗む。
何度か女性が入れ替わった時「へー、俺バギオより北に行ったことないんだよね。今度行ってみたい」と隣に座った女性と連絡先を交換した。ちょっとタイプだったのである。
マニラ旅ラストの夜。KTV夜遊びを満喫した。
ーー終盤寝ていたのか私を呼ぶ声で目が覚めた。閉店時間が来たようだ。
女性の膝枕でヨダレを拭き体を起こすと伝票が渡された。
私は会計をマリーに任せようとバッグと伝票を渡した。
彼女が1,000ペソ札を数える。何度か確認して「レンジ…… 足りない」と言う。
あれ? 多めに持ってきたはずなんだけどな。私はカードで支払うよう伝えた。
ーー控えが戻ってきた。
目が乾燥してよく見えない。
んんっ?
それは足りないはずだ。桁を数えるといつもより一桁多い。
数え直しても変化なし。
こりゃ面白いわ! ははっ、あっはっは!
面白くて面白くて笑いが止まらない。面白過ぎて腹を抱えたまま部屋を出て徒歩でマラテへ帰ろうとしたくらいだ。
あまりの面白さにそのレシートと皆の記念写真を撮りケンさんに送った。
「やっちゃいました。てへっ」
その様子を見ていたマリーが心配そうに「大丈夫?」と私の肩を叩く。
私も健闘を称え「これくらい良いんだよ」と彼女の背中を擦る。
ーー足元がおぼつかない私は両サイドをマリーと叔母に支えながらタクシーに乗った。
ーー午前二時半。
マラテに着いたら三時前か。ちょっとお腹空いたから三人で焼肉喰って四時。ケンさんとの待ち合わせは四時半だったな。よっし結果オーライだ。
マリアは寝てるかな…… さすがに寝ているだろう。
泥酔が回復しない私は車内でも虚ろだった。
先ほど撮った写真を眺める。
ガタガタと震え始めた。
あかん。あかんわ。
レシートのことはどうでも良い。
写っている女性陣の中に見覚えのある女性が一人。
その人を私はよく知っている。
526の女性。以前から仲良しで何ならメル友だ。しかも私服で写ってるぞ?
恐る恐る横目で様子を伺う。
マリーは外の景色を遠く眺めていた。
視線に気付いた彼女は私の耳元で呟いた。
「You’ve gotten good topic. (良いネタだね)」
「What? (えっ?)」
「For your blog.. (あなたのブログに……)」
えっ?
「CRAZYMANILA. (クレイジーマニラ)」
パンツまでKTVで剥かれました⁉️🤣
なんか色々知られなくていいことがバレてません?🤩
なんだろう。ヤバイ感じがする😂
再び禁酒を決意するほど飲み過ぎました!後でめちゃくちゃ後悔するんですけど3歩あるくと忘れます笑
えΣ(・ω・ノ)ノ
まさかの読者( ゚∀゚)・∵ブハッ!!
ということは今もブログ読んでる…((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
次話以降で説明します!ラストはオノケン死すのパターンも良いかなぁと思ってます笑
もしかして今のレンジブログはオノケンさんが代筆で書いてるのか、、、?!🤣
本当にレンジさんは生存しているのだろうか、
そしてマリーはどこまで知っているんだ🤔
次回が気になりすぎる!!
いえ、レンジさんは生きていますよ😅
というか、このタイミングで彼が死んでいたら、飛行機乗り逃しなんて、小学生でもしないようなミスはしませんから😄
鋭い!私はオノケンでありレンジであるかもしれません。そのどちらでもないかもしれません。
更新お疲れ様です。凄い展開に驚きます。マリーのここまでの行動が一段と恐ろしくなりました。どうなっていくのか、、
そろそろ結末に迫っていきます。おそらく皆さんに笑って頂けると信じてます。
チェックメイト!?
からの大逆転!?かもです。
これはホラーですか?
世にも奇妙な物語に出るやつ…。
いつもギリギリの攻防戦ですね😂
純愛物語を書くつもりでクレイジーマニラ始めたんですけど完全にエンタメになっちゃいました。てへっ。