フィリピン SIM インターネット

 

――夕刻、マニラ上空にて機窓から見慣れた街並みが見えてきた。

「ケンさん、来たね!」

「来ましたね!」

「とりあえず入国審査だね」

「ですね。スムーズに通過出来れば良いんですけど。機内のこの感じだとイミグレも楽勝じゃないですか」

フライトは非常に快適で、予定通り17:00頃にマニラ空港へ着陸した。

 

 

【レンジブログ203】マニラへ到着、LAカフェにて夜遊び作戦会議!

 

――飛行機は滑走路を進み搭乗口に接続された。乗客は荷物を手に持ち、通路へ並ぶ。ハッチが開けられると列は進み始めた。

「行こうぜ!」

「はいっ!」

私たちは速足で入国審査へ向かった。

 

その手前で軍服を着た人が何やらプラカードを持っている。「ワンヘルスパスを提示してください」とアナウンスしていた。

入国審査のゲート前でQRコードのチェック。無事通過。ただいつものマニラ空港の雰囲気とは違い、少し物々しいものだった。

入国審査の列は200名ほど。複数のカウンターが開いていたので、その一番少なそうな列に並ぶ。

しかし進み具合が遅い。おそらく国籍によって提示する書類がパスポート以外にもあるのだろう。

一時間ほど待ってようやくゲートを抜けた。

 

――マニラ空港内は名古屋空港とは全く違い、多くの人で賑わっていた。以前の様子とほとんど変わらない。

違う点を挙げるとすれば人々がマスクをしていることくらい。しかし、その多くは鼻を見せていたり顎マスクだったりした。日本ほど厳粛な空気ではなさそうだ。

ちなみに私は感染予防のため自宅を出た時点から不織布マスクを三重に着用していた。ここまでの道のりで酸素不足に陥り多少アホになったかもしれない。

 

ケンさんは出口付近のGlobe窓口でスマホのSIMを更新していた。

「1,000ペソで30GB、電話番号は更新されるようです」

値段はともかくキャリアの電話番号が変わるのは痛いな。後でLandlineはどうなのか聞いてみよう。

空港の到着出口を出る。

 

マニラ空港 T3 到着口 国際線

気温は日本に比べるとはるかに涼しい。雨が降っていたのか、タクシーや送迎を待つ人々で溢れていた。

「ケンさん、俺もSIM変えるわ」

近くのブースで手持ちのフィリピン用スマホのSIMを更新した。ケンさんと同じくGlobe。

日本で使用していたスマホ(Ahamo)については自動でSmartに切り替わり、データローミングオンですぐに利用可となった。

 

さて…… 二人でGrabを起動する。久しぶりに開くアプリだ。

「僕、マニラに来てやりたいことの一つだったんですよね!」

確かに『マニラに来ました』感がある。

 

しばらく二人でGrabかタクシーを捕まえようと付近をウロウロする。

人々は同様に配車アプリを利用したり、迎車を待っていたり。バスや乗り合いタクシーを待っているのかひたすら『ぼーっと』している人も多かった。

なかなか移動の術が見つからない。焦りだしたのか「レンジさん、全然Grab捕まりません!」とゴリラがウホウホ言い出した。

早くマラテに向かいたい気持ちは同じだ。私もGlobeとSmart両方で「4-6人乗りのグレードの高いやつ探すわ!」とブヒブヒ応えた。

検索設定を変更すると、あっさりドライバーが見つかった。このところ物価上昇しているとのことだったが、このときの提示額は空港からマラテまで380ペソほど。為替のことはあるがそこまで意識するほどではなかった。

ほっとして大型SUVに乗り込む。

 

――空港周辺の渋滞を抜け、スカイウェイへ。

見覚えのある夜景が広がっていた。毎度のこと「マニラ到着だぜ!」と感動するものだが、今回は格別だった。

『ケンさんと二人で再びマニラへ』

これは私にとって大きな夢となっていた。それが今ようやく叶ったのだ。

「レンジさん。帰ってきましたね!」

「話しかけないで。涙腺崩壊するわ」

車窓から見る景色は変わっておらず。この二年間我々の時間は止まっていた。それがようやく本当に動き始めた。

 

そして、20分ほどでマラテの街中へ。所々冠水していたがスムーズに車は進んだ。

「あー、レンジさん。私感動に震えてます」

「そうだね…… 替えのパンツ多めに持ってくればよかったな」

私たちにとって始まりの街マラテ。見慣れたはずの街並みがこれほど愛おしいとは。

 

――私の滞在先のバーチタワーへ到着。

二人ともここで降り、まずは私のチェックインを済ませる。

「Good evening, Sir! (こんばんは、ダンナ!)」

見覚えある受付スタッフが「お久しぶりですね!」と声を掛けてくれた。私も会心の笑顔で返事する。

パスポート提示、受付シートに記入、デポジットを預け、それに加えて入国の際に利用したワンヘルスパスをメールで送信。

「さっ、行こうか!」

私はカードキーを受け取り、ケンさんと共に部屋へ向かった。

 

『ピコっ、ピコ』

カードキーを当ててロック部分から懐かしい電子音。

部屋に入ると変わらぬ間取り。そして、ベランダから見下ろす景色。

 

マニラの夜景 マラテ フィリピン

 

「ほら、ケンさん。一服しようよ」

彼をベランダに誘った。眼下にはマラテの街が広がっている。

 

「ケンさん、帰ってきたね」

「はい。来ましたね、ついに」

「本当それ。最高だわ」

「最高ですね……」

 

ブタゴリラ、マジで泣く。

 

まるで部活を引退したOBのよう。汗や涙を流したホームグラウンドを見つめる。

仲間とともに過ごした時間。歓喜、衝突、困惑、驚嘆、安堵様々な経験を共有した場所だ。

再びここへ戻ってきたのだ。

しばらく無言で街並みを眺めた。

 

「ケンさん、俺この景色をケンさんと一緒に見るためにマニラへ来たんだ」

「何ですか。ここで私にプロポーズですか。止めてください。行きますよ!」

彼は恥ずかしそうにタバコの火を消した。私も切り替えて外出準備を整える。

 

――アフターコロナ、記念すべき一軒目はマニラのルイーダの店こと『LAカフェ』に決まった。

「レンジさん、何やってんすか。そろそろ行きましょうよ」

「いやそれがさ、セキュリティBOXの調子が悪いのよ。ロック出来なくて」

電源の接触が悪かったのか何回か電池を抜き差しすると稼働した。このような不便すら『これぞマニラ』のような感覚になり、『だがそれがいい』となる。

 

「ごめんっ、お待たせ!」

今度はケンさんの滞在先リヴィエラマンションホテルへ。バーチホテルを出て徒歩で向かう。

ボコボ通りからアドレアティコ通り、ロスマンホテル北の細い路地を抜け、マビニ通りのホテルエントランスへ。

確か過去に火事があったと聞いたが、しっかりと営業しているようだ。

見覚えあるボーイがケンさんを見つけ声を掛けてきた。二人とも再会を喜んでいた。

受付の女性もケンさんを覚えているようでチェックインをする間親しそうに会話を交わしていた。

 

――ケンさんも外出準備を終え、二人で再び外へ。まずは両替商シェーナに向かう。

「相変わらずクッセー街だな、最高だな」

「ですね。このビチャビチャな歩道も最高ですね」

「おっ、痩せた犬!」

「うわっ!」

ワイワイ言いながらシェーナに到着。ドアマンの彼も親しい一人。三人で肩を叩きあった。

 

中へ入ると、店員が驚いた表情を見せた。

「Long time no see. Welcome back, sir!(久しぶりですね、ようこそダンナ!)」

私たちも当然嬉しい。当時そのままの顔ぶれに『本当にマニラへ戻ってきた』という実感が沸く。すでに二年の月日は埋まったに等しい。

両替レートは10,000円がちょうど4,100ペソだった。

 

――エルミタエリア、デルピラ通りへ。

「治安が悪くなっているって聞きましたけど」

「そうだね。今のところは大丈夫そうかな」

特に夜間の繁華街、細い路地などは犯罪に遭う確率が上がる。

本来なら徒歩での移動は避けるべきで、短い距離であってもGrabなど使い多少なり危険を減らすのが良いだろう。

ケンさんはそのガタイを広げてフルに覇気を出している。行き交う人々は彼を避け、足元のネズミやゴキブリは息絶えた。私も周囲への警戒を怠らない。

慣れた街とはいえ状況は一変しているはずだ。『命懸けの旅行なんだ』だと肝に命じる。

 

――そして、見えてきたイエローのナイスな看板。LAカフェだ。

「この辺り、少し街並み変わりましたか」

「そうだね、真新しい飲食店と…… LAの向かいはクローズか」

「入口の雰囲気も変わってますね」

「さぁ、入ろう!」

ケンさんを先頭に入店した。

 

――入口からさっそく多くの女性たち。体が触れ合うほどの混雑ぶり。

「うおっ、結構賑わってますね!」

「そうだね!」

私としては奥の席でまずはゆっくりビールでもと思ったのだが、何を血迷ったのかケンさんは入口すぐの中央カウンター、向かいの目立つテーブル席に座った。

周囲を見渡すと、欧米人のお客さんが数組、女性の数は20~30人くらい。二階はオープンしておらず一階に人は集中していた。かなり混雑している。

 

座ってすぐに女性たちに声を掛けられた。私たちは「まず注文します」と逆ナンを断った。

女性店員がやってきてオーダーを伝える。とりあえずサンミゲルを二本とポークシシグをお願いした。

店員は「二本だけ? バケットでオーダーしてよ。それか私にチップ!」と言ってきたので、20ペソを渡して躱した。

 

 

夢にまで見た瞬間だ。LAカフェでケンさんと乾杯。

「かぁーっ! 最高ですね!」

「マジ旨すぎてちょっと射精したわ」

「レンジさん、アルコール大丈夫ですか? しばらく断酒してたんでしょ」

「そう、色々あってね。だからもう一口目からヤバい感じしてる」

「無理のないペースでお願いしますね。それにしてもこの雰囲気やっぱ最高ですね!」

 

ケンさんと話をしているとシシグも来た。

「旨っ! LAのフードメニューってマジ旨いっすよね」

「このシシグ、ポケットに入れて持って帰りてぇ」

二人ともビールとつまみが進む。

 

――ほろ酔いを覚えたところで、女性たちに囲まれ始めた。

ケンさんは両サイドを固められたようだ。まんざらでもなくエロい表情で女性たちと会話している。

 

「ハイ、レンジ!」

 

そして、私に声を掛けて来た女性。

見覚えがあった。

 

 

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レンジ
オノケンと同じ会社の先輩であったレンジ。数年前からマニラを訪れるようになり、やがて現地法人を持つまでに。趣味は海外サッカーTV観戦。 実体験に基づいたフィリピンにおけるマニラの闇、貧困と格差、現地ビジネスなどオノケンとは違う視点の記事をアップしていきたいと思います。

8 コメント

  1. 入国からLAの流れ、情景がすぐイメージできました😭涙が出そうでしたよ。出しませんけど。
    変わらずあるという安心感って良いですよね✨

    • 心の何処かでマニラのことが忘れられず自分に嘘をつきながら過ごしていたのだと実感しました。私、マニラ大好きです。

  2. うをを! レンジさんのオチ、早速刺さりました。

    時を同じくして、似たような体験をしたものですから。

    2年も経った想像してない場所で「久しぶり!」と声をかけられるシチュエーション。

    嬉しくもビビるその瞬間。いやー、楽しみが始まったって感じですね。

    無理ない範囲で更新宜しくお願いします!

    • Nさん、コメントありがとうございます! そうですよね、旧友に会った感じで嬉しかったです。こちらは客で相手は商売ですけど日本と違ってコミュニケーションが多いのでそういった意味でも魅力的な国です。

    • LAの飯って最高だよな。あの雰囲気のアドバンテージ抜きにしても旨いわ。違うな…… ケンさんと一緒だから旨いんだぜ。はい、100円。

  3. バーチタワーのセキュリティーボックスは確かに当たりはずれがありますね(;^ω^) ところで、バーチタワーのサウナは直っていましたか??? 

    • テレビのリモコン操作が謎な場合ありますよね。サウナ!? ジムやプールがあるフロアーのことですかね。今回はそこへ行ってないので不明です。申し訳ありませんm(_ _)m

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