ーーマニラ到着後、すぐに向かったのはLAカフェ。
事前情報ではもうすでにパンデミック前の状況に戻っていると聞いていた。
入店してみると確かに当時と同じ雰囲気。多くの女性が男性に愛想を振りまき、ドリンクを求めていた。
【レンジブログ204】マニラのLAカフェで女性と会話、夜遊び開始!
私に声を掛けてきたのは、数年前にここLAカフェで出会ったベテラン女性。過去何度か奢ったことがあり顔見知りだ。
たまにフィリピンの内情や女性の価値観を教授してもらっていた。名も知らないLAの女教師である。
「おー、久しぶりだね! 最近どう?」
「本当久しぶり! 暇よ、お客さん少なくて」
「そうだよね。治安が悪くなってるって聞いたけど」
「そんなことないわ。人が少ないもの。パンデミック前の方がよっぽど悪かったわ。あなたも知ってるでしょ」
「そうだね、確かに悪かったかも」
「でしょ。今回はいつまでマニラにいるの?」
「四泊五日だよ」
「そう。とにかく久しぶり、楽しんでね!」
私は彼女に50ペソを渡した。彼女から頬にキスを受けた。寒気がした。
「レンジさん。彼女、懐かしいっすね。見たことあります」
「治安は昔の方がヤバかったって、ははっ。それにしてもケンさん、空気悪いね」
「この人混み絶対感染間違いないでしょ」
「外でマスクしてても建物内じゃしてないもんな」
「家で服着て外で全裸みたいな無意味な無防備さですね」
「ははっ、確かに滑稽だね」
私たちが会話していると、ケンさんの両サイドの女性たちは積極性を増し、彼を弄び始めた。
まんざらでもない様子。そのまま地獄へ誘われるんだ。私は今この瞬間を楽しむから。
ーー私のところにも数人の女性が近寄ってきて「一緒に飲もう」と言う。私はその中からタイプっぽい一人に声を掛け、隣へ座るようにと椅子を動かした。
「Nice to meet you. (初めまして)」
「ハジメマシテ。日本人?」
彼女は日本語が話せた。
聞くと日本の地方都市で数年間勤め、今年に入って帰国したらしい。そして現在、昼の仕事をしながら生活費のために週末だけLAへ足を運んでいるようである。
すぐさま「ホテル何処?」と猛烈なアプローチを受けた。
私は「到着したばかりで、これから飲み歩くから無理なんです。また今度ね」と断りを入れた。彼女は「じゃ、あなたが眠るときに連絡して」とLINE交換を求めてきた。表示名は”アリアナ”だった。
私は応じながらも「ありがとう。でも短小包茎のインポなんです」と正直に話した。
彼女は「絶対嘘だわ…… 私は今夜はもう帰るから、後日会いましょう」と笑った。
少し会話した後ドリンクを一杯奢り、100ペソを渡した。彼女はお礼を言って席を立ち店を出て行った。
そしてタイミングを見計らっていたのか今度は別の女性グループに囲まれる。
「レンジさん、向こうの女性見てください。ほら、カウンターのところ。白のワンピ」
ケンさんの千里眼が発動したようだ。
目線の先にはS級妖怪がいた。
「おぉ、可愛いね!」
「あの乳! 僕、あの子なら全然……」
と言いながら、両サイドの女性から頬にキスを受けている。アヘ顔のゴリラはもうサンミゲル三本目だった。
ーーたっぷりと喧噪を味わったところでLAカフェを出た。歩きながら明るい中心部へ向かう。
「で、どこのKTV行く?」
「少し静かなところがいいですね」
LA店内では久しぶりの雰囲気に飲まれたため、夜遊び作戦会議はほとんど出来なかった。
相談の結果、新規開拓よりも馴染みのある『花と蝶』へ行くことにした。
ーー店前ではスタッフが呼び込みをしていた。外装はそのままだが店名が『Super Star』に変わっていた。
軽く会釈をすると扉を開いて迎えられた。
階段を上る。内装が少し変わっていた。以前はバイキング形式の軽食コーナーがあったのだが、そのスペースが小さなステージになっていた。女性たちはその下に並んでいる。
女性スタッフに促され奥のVIPルームへ入った。少人数用の部屋、室内はそのまま変わらずの内装だった。
「懐かしいね」
「ですね。そしてショーアップも」
私たちはショーアップをお願いした。
スタッフの説明では「パンデミックで新しい女性ばかりになった。でも観光客が少なくてとにかく暇だ」とのこと。
ーー女性たちが続々と入ってきた。15名ほど。目の前に美女が並ぶ。肩を寄せ合い狭そうだ。
「ケンさん、どう?」
「いやー、壮観です。やっぱレベル高いっすね」
彼の目は完全に乳たちを捉えていた。私も久しぶりの光景をエロい目で舐った。どの女性も美しく見えた。
「とりあえず全員見たいよね」
私はスタッフに次のグループをお願いした。全部で3グループあるようだ。
私はここで新規嬢を探すつもりはなく、過去に話したことがある女性が居ればその人を指名するつもりだった。
しかし、二人くらい『見覚えあるかなぁ』くらいだったので指名はせず、ローテーションを選択。
「ゴメンナサイ、ローテーションない」
うえっ!? システムが変更されたらしい。指名しなければならないと。
今思えば三人分くらいの指名料を払って20分交代でローテーションしてもらえば良かったと後悔している。無駄なお金になるかもしれないが、もし初回のショーアップをミスってしまった場合に大きな後悔となる。豆腐メンタルの私たちに指名代えという鬼畜の所業は真似できない。
「ケンさんは決まったの?」
「はい、もろタイプが居ました。最初のグループです」
「俺も指名するなら最初かな。どこに立ってた?」
「真ん中です」
「じゃ、俺は左の女性で」
ーー指名嬢たちが入ってきた。
この時点で違和感を覚えたがまだはっきりとしなかったので、後に述べようと思う。
我々のビールが運ばれてきた。
隣に座った女性はナプキンでサンミゲルライトの瓶の口を拭いてくれた。これもフィリピンに来たんだと感じる小さな感動。
また結露が滴らないようにナプキンで瓶とグラスの胴を巻いてくれた。
そして、女性たちのドリンクが来たところで、改めて挨拶の乾杯。
そこで確信した。
隣の女性の顔面はもちろん、ケンさんに憑いた女性の顔面もイメージと違う。
「レンジさん…… 久しぶりのショーアップだったんですけど」
「ケンさん…… 俺ら舞い上がっちゃったのかな」
そう。二人ともショーアップを壮大にミスったのだ。
背を躱して、お互いの指名嬢を確認する。やはり言い訳出来ない。猛烈にミスっている。
お互いにコンタクトレンズを外していたのかと思うほど美人ではない。つまり微妙だ。
二年ぶりのマニラ。一発目のKTV、ショーアップ。ようやく立てた世界舞台。そのピッチ上にも関わらず我々は開始早々オウンゴールを入れてしまった。
久しぶりであるという喜び補正を入れても、これではテンションが下がってきた。マニラへ来てまで何やってるんだ我々は。
こうなればもう歌うしかない。
五連続で『純恋歌』を入れた。
「目を閉じーればー」
と、抱けない女は居ない。鼻を抓めば喰えない飯も喰える。
KTV一軒目にして喉が出来上がった。酔いも完全に回った。
楽しいのは楽しい。我々のチョイスに罪があるだけだ。
ーーワンセットで店を出た。
「ケンさん、どうだった?」
「どうもこうもないでしょ。何ですかレンジさんの女性。顔面が月面かって思ったくらいですよ。砂利でスクラブ洗顔してるんですかね」
「言い過ぎ。ケンさんの指名嬢もまあまあの地縛霊だったよ。見えてた?」
「マニラって視力落ちる魔力あるんですかね」
「酔い過ぎたかな。強くてニューゲームのはずが」
「ショーアップの時はまだ酔ってないでしょ。リハビリが要るってことですよ」
私たちは励まし合いながら、雑踏を進んだ。夜は長い。何もかも始まったばかりだ、切り替えていこう。
ーー続いて向かうは、不運にもロックダウン時にオープンした大箱『プレミアクイーン』だ。
確か最後マニラに訪れた時はスパからの改築中で、2020年3月のオープンだったと記憶している。「この大箱も賑わいそうだな」と言いながら楽しみに待っていた記憶がある。
当時、渡航前日にマニラロックダウンとなってしまい、ここを訪れることは叶わなかった。
店前のスタッフに導かれ、エントランスへ。
豪華な内装が目を惹く。他のグループ店と同じような造りだった。
二階のVIPルームへ通された。
「ケンさん、今度はしっかりね」
「釈迦に説法ですね」
ショーアップ開始。女性が入ってきた。マジでこの瞬間は誰でもOKな気がする。
それこそ指名など高望みの極致であり傲慢なる愚行だ。美女たちの中からさらに自分にとっての一番を選ぼうとするのだから。
そして自ら選んだにも関わらず美女ではない人物が横に現れたのなら、それは完璧に自分が悪い。きっと日頃の行いが報いとして、ショーアップで並んだ位置からソファへ来るまでの間に女性を化けさすのだ。
「決まりましたっ!」
「うわっ、ビックリした。どうしたの急に」
「レンジさん、僕決まりましたよ。レンジさんは?」
「うーん、次のグループ見ようかな。ローテーションがいいのだけど……」
私は内心ガクガクと震えていた。ケンさんの執念と覚悟を感じたからだ。
一グループ目の入室途中で決めやがった。おっ、怖ろしい。
夜遊び上級奥義
『天和一閃(てんほういっせん)』
女性に好意を伝える究極の秘技。ケンさんは配牌が始まり出した時点でテンパイを知っていたのだ。
マニラ史書にはこうある。配牌未完でもツモったという伝説の一手。卓を挟んだ相手も周囲で見守る者たちも皆涙を流しながらそれを認めたと伝わる。
入室の一瞬の隙を見逃さず女性のボディラインを周回し、立ち位置へ定まるまでに器量を確認する。しかもそれは第二グループ以降では意味がなく、第一グループかつ奇跡的な巡り合わせによって女性が現れなければならない。
実力と運が重なり不滅の祈りが完成して、初めて朱雀の鳳珠を受け取ることが出来るのだ。
いつの間に習得したのだ…… 凄い……
しかし、その術は……
古より禁忌とされているものだぞ。ケンさん、正気か!? この旅で死ぬ気なのか!?
ーー私は結局3グループ目で指名した。指名嬢はソファに座ると急に美人度が劣化した。
早くも天和一閃の影響が私にも現れてしまったか。
この先の不幸は避けられないかもしれない。
そしてそれは杞憂に終わらない。
RPGの様に経験値を貯めてレベルアップしていく感じですか?パルプンテの奇跡があるんですかね?😃期待が高まりますね✨
エッジさん、お世話になっております!出来事を活字にしていくと結構文字数がありまして。次話の次くらいから徐々に本領発揮していきます。概ね流れはオノケンブログに準じたものですが乞うご期待を!