[前回のあらすじ]

フィリピーナ彼女とその家族と共に、フィリピン ダバオへの旅行に。レンタカーを運転するも、さっそくフィリピン特有の交通事情に巻き込まれる。何とかホテルに辿り着くが、部屋のベッドルーム利用について父親と意見が割れる。

【レンジブログ104】フィリピンで初ドライブ。ホテルにチェックイン

 

クレイジーマニラの記事は、実際の旅行や取材を元に記述しています。小説風のストーリ仕立てで記述していますので、過去の記事を参照頂けると話の内容が理解しやすいかと思います。また、登場人物の名前等は仮名を用いているところがあります。

[レンジブログ第一章第一話]
【レンジブログ1】日本人経営者と私、フィリピンでの入国審査へ

[レンジ外伝第一章第一話]
【レンジブログ101】フィリピーナをフィリピン国内旅行に誘ってみた

 

 

 

【レンジブログ105】フィリピーナ家族と国内旅行。初日に父親と口論

 

私の手を掴み、握り直す父親の表情は真剣だった。

 

父親「No no, Range. We’re “Equal”. Use another room. (いやダメだ、レンジ。私達は”平等だ”。もう一つの部屋は君が使え。)」

 

私は、彼の言動に感動した。

 

彼には日本人と似た感覚がある。「恩」の概念が自然と備わっている。間違いない、優しい人だ。

そして、この常識的な父親の元で、何故にマルコの様な娘が育ってしまったのだと思った。

 

それでも私は、彼らに出来るだけ快適な空間で過ごしてもらいたかった。

 

父親に食い下がる。

私「I’m Okay! The sofa is enough for me. (私は大丈夫です。ソファで十分です。)」

 

私は強く遠慮するが、父親も譲らない。二人の押し問答はしばらく続いた。

 

父親「Range, listen. We’re “Equal”.(レンジ、聞くんだ。私たちは“平等”だ。)」

 

よし、わかった。父親の考えは変わりそうもない。

これ以上抵抗はしないでおこう。

 

結局、彼の意向通り、私がもう片方のベッドルームを一人で使うことになった。

 

 


[ダブルベッドルーム]

 

 

そして、「悪魔の私」が心で囁く。

 

“ 本当に良いんだな、父親よ。私が一方の部屋を使うと言うことは、あなたの娘を夜中にこちらへ呼ぶ可能性があると言うことだぞ。むしろ、娘の方からやって来るかもしれない。それでも良いのか? 父親よ。”

 

と、正確には、私のブスな本音通りになったわけだが。

 

それでもこれから三泊の予定。

やはり申し訳ない気持ちはあった。

 

幸い、彼らが使う方の部屋はスペースに余裕がある様で、確かにベッドの追加は可能の様だ。

その部屋に、マルコ、父親、母親、弟の四人が寝ることになった。

 

そして、お互いの部屋にて荷物整理と外出準備をする。

 

私は部屋に入ると、プライベートな空間を手に入れた様な気がして、「正直、ありがたい。」と思った。

短期間ではあるがこのまま24時間、ずっと他人の家族と過ごすのは辛かったのだ。

 

どうしても逃げたくなった場合にはこの部屋に閉じこもれば良い。

私はスーツケースを開け、長ズボンから短パンへ、来ていたYシャツをTシャツへとラフなものに着替えた。

 

そして、身支度が完了し、部屋を出る。

 

先に、リビングには全開でリラックスしている一家の姿が。

マルコを始め、皆ソファに横になり、大画面のTVを無言で見ていた。

 


[部屋のリビングスペース]

 

何故かこの光景に、私は強いフィリピン感を覚えた。何処かで見たことのある場面だったからだ。

 

そう、マニラの街中の至る所。

 

日中から何もせず、ただTVを無言で見つめる人々。一日の大半をTV観戦か昼寝で過ごす人々。

 

さらに父親がTシャツを捲り上げ、お腹を出している姿はまさにそれだった。

今デジャブの様に、マルコの家族とマニラ市民の姿が重なったのだ。

 

父親よ、見た目は西洋人だが、育ちまでもフィリピンなのか?

結婚後からマニラに移住したと聞くが、その雰囲気は溶け込み過ぎだろうて。

その腹出しのナチュラルさはフィリピン人そのものだぞ。

 

私がもし、マニラに移住して何年経とうと、無様な「腹出し」は決してすることはないと誓える。

ケンさんのような腹筋バキバキであったなら、そもそもシャツすら着ない。

 

マルコ達よ、ここはあなた方の実家ではないぞ。

あまりにも寛ぎ過ぎだろう。

 

私「ごほんっ! Where do you want? Hungry? (ごほんっ! 何処に行きたいですか? お腹は?)」

 

一家は風呂上がりの寝る前のような状態から、私の声で私の存在を思い出し、「あー、そういえば旅行に来ていたのね。」くらいのリアクションだった。

 

そして、皆で相談すると、お腹は少し減っているが、とにかく日中の移動で今は疲れていると言う。

 

それでは「このホテルのレストランはどうか?」と提案すると、それならOKとなった。

 

TVを切り、私達はもう一つの建物にあるプールサイドのレストランへ向かった。

 

時刻は午後3時半。

 

ランチには遅いし、ディナーには早い。私達はそこで軽食を取ることにした。

こちらの建物は、中庭にあるプールとレストランを取り囲む様に、アパートタイプの部屋が何棟か建てられていた。私たちが宿泊する方とは違い、少し年季を感じるもので、おそらく長期滞在者などが利用するのであろう。

 


[プールサイドの小規模レストラン]

 

この時間帯、プールサイドには私達の姿しかなく、とても静かだった。

 

軽食で済ませるはずが、皆お腹がかなり空いていたようである。

私以外は「おかずとライス、スープ」の定食メニューを頼んでいた。

 


[私がオーダーした ” ビーフタコス ” ]

 

移動の疲れからか卓上の会話は殆ど無い。

父親の唯一の発言、「ここのホテルのオーナーはイギリス人だって。」に、皆が「ふーん。」とだけ返す。

まさかの、卓上の会話はたったこれだけだった。

 

 

そして食事後、すぐ部屋に戻った。

 

一家は再びソファに陣取り、TVタイム。

 

私はこう言いたかった。

「確認するが、ここは実家ではないぞ。今は旅行に来ているんだ。皆、何処かへ行きたいだろう?」

 

しかし、そんなことは言えるはずもなく。

私もこの際、フィリピン人になったつもりで、「無の境地」を楽しむことにした。

隣でスマホを触りながら時間がゆっくり経過していった。

 

 

そして、午後7時。

 

無意識の間があったのか、突然女性陣が動き始める。

 

マルコ「Let’s go outside. We have to buy some groceries.(外に行きましょうよ。日用品を買わないと。)」

 

母親「Yeah, and I’ll cook dinner for everyone later.(そうね、そして、後でみんなの夕食を作らなきゃ。)」

 

これから「マーケット」に買い出しに行くと言う。

母親は「いつもレストランじゃ、お金掛かるでしょ。部屋にはキッチンがあるのだから、作れば安くつくでしょ!」と、至極当たり前のことを言ってくれる。

外食の財布持ちとしてはこれほどありがたい言葉はない。

私は母親に「そうですよね。手作りの方が美味しいですしね!」と強く相づちを打つ。

 

よしっ、ようやく行動開始か。

しかし、父親と弟は「疲れたから」と、部屋で待機しているとのこと。やはり中身はフィリピンスタイルなのか。

男達はそうやって怠けるのだな。

 

ただ、私にとっては変なプレッシャーが増えず、ありがたい。

 

結局、私とマルコ、母親で出掛けることになった。

 

 

外はもう真っ暗。ホテルのすぐ外は住宅街という事で、街灯は少なく闇夜が広がっている。

 

ヴィレッジの門番にカードを返却し、IDを受け取る。

 

さて、私達はこれからダバオの中心部へ向かう。

私は夜のドライブ開始に再び少し緊張する。

 

マルコが「近くのマーケットに行って。」と言うので、グーグルマップで「Market」と入力する。

 

するとすぐに、ホテルから4キロ、車で10分ほどのところに発見。

「アグダオ パブリック マーケットAgdao Public Market」と言う場所が見つかった。

 

さらにそのマーケットの情報を検索すると、現地でも最も大きなマーケットの一つで、ダバオの人々の生活に必須となっている場所のようだった。

 


[アグダオマーケット]

 

さっそく、「マルコ、見つかったよ。ここへ行こう!」と伝え、車を加速させた。

 

時間帯はラッシュアワーだと思われた。

ホテルへ向かった時よりも明らかに交通量が多かった。

 

しかし、私はすでにダバオでの運転に慣れつつあったため、夜間でもさほどストレスを感じなくなっていた。

 

私「I can drive in Manila also, haha!(マニラでも運転できるぜ、ははっ!)」

 

と、助手席のマルコに得意げに言う。

 

マルコ「Watch out!(前を見て!)」

 

うわっ、危ないっ!

急ブレーキをかける。

 




 

 

うおーっ、超ギリギリ。何とか衝突を回避。

 

スムーズに車が進んでいたところ、右前方で小型ジプニーが突然小規模な渋滞を作ったのだ。

そこに突っ込むところだった。

 

マルコ「チッ!」

 

彼女の強烈な舌打ちが、私の心を砕く。

私は女性の舌打ちが特に苦手なのだ。

 

母親は「気を付けてね。」くらいの苦笑いだったが、私のショックは大きかった。

 

大変申し訳ありません。以後、二度と調子に乗らないことを約束します。

 

その後は、安全運転を心がけ、無事に「アグダオマーケット」へ到着。

 

周辺は大変多くの買い物客で賑わっており、想像よりも広大なローカルマーケットのようだった。

 

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レンジ
オノケンと同じ会社の先輩であったレンジ。数年前からマニラを訪れるようになり、やがて現地法人を持つまでに。趣味は海外サッカーTV観戦。 実体験に基づいたフィリピンにおけるマニラの闇、貧困と格差、現地ビジネスなどオノケンとは違う視点の記事をアップしていきたいと思います。

2 コメント

  1. いつも楽しく拝見してます。
    ドライブいいですね。
    冒頭に書いていた運転しやすさですが、ダバオはマニラよりはマシというのは間違いないですよ。

    先に車の花をねじ込んだもの勝ちは同じですけど、ダバオは比較的みなさんゆっくり走ります。

    マニラは、車の量が倍以上、スピードも倍以上です。

    もう慣れましたが、最初はドキドキでしたね。

    続きが、楽しみです。

  2. DONDONさん、コメントありがとうございます。
    私は運転ストレスのあまり白髪が増えるどころが逆に消えました。
    今年もよろしくお願いします。

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