マニラのホテル ベッドルーム

 

[前回のあらすじ]

マニラのKTVで意中の女性を口説こうとするレンジ。しかし、彼女からお金の話題が出て、雰囲気が一変する。レンジは気分が壊れてしまったと、この夜は一人でホテルへ戻ろうとするが。

[前回記事]
【レンジブログ135】体で払う? 家賃が足らないフィリピーナたち

 

クレイジーマニラの記事は、実際の旅行や取材を元に記述しています。小説風のストーリ仕立てで記述していますので、過去の記事を参照頂けると話の内容が理解しやすいかと思います。また、登場人物の名前等は仮名を用いているところがあります。

 

[序章第一話]
【レンジブログ1】日本人経営者と私、フィリピンでの入国審査へ

[第一章第一話]
【レンジブログ33】プライベートフィリピン女性との深夜デート。マラテのディスコ EXKLUSIVE へ

[第二章第一話]
【レンジブログ51】マニラのフィリピーナが初めて日本の地方都市に来る

[第三章第一話]
【レンジブログ71】マニラでビジネス開始。フィリピーナのコンサルティングで法人設立。

 

レンジブログは第三章で完結しています。

それ以降のエピソードが「オノケンブログ」の内容になります。

[オノケンブログ第一話]
オノケンブログ第一話「転落と後悔」

 

また、レンジ個人のその後のエピソードは「外伝」という形で記述しています。

[外伝一章第一話]
【レンジブログ101】フィリピーナをフィリピン国内旅行に誘ってみた

 

 

【レンジブログ136】KTVアフターに誘って、フィリピーナに告白

 

ーー私は待っていた。

 

ミユキがそれでも私を引き留めようとするはず。

私を呼ぶ声。耳に届く度に嬉しさで昂った。

もっと欲しい。

もっと強い声を。

 

ミユキ「レンジさんっ!!」

 

よっし、十分だろう。

私はドアノブから手を離し、彼女に体を向けた。

 

私「…お腹空いた? ご飯行こうか」

 

溜めに溜めて、「しょうがないなぁ」と言う雰囲気を出した。

内心は彼女の「待って」の言葉で気を失いそうなほど嬉しかった。

完璧だ、ブス100%の演出である。

 

案の定、彼女は安堵したのか、笑顔で「うん!」と言う。

 

下心は煮え滾り、爆発しそうだった。

効いたぞ、この必勝パターン。

不機嫌モードからの男の優しさ全開。

なんてイージー!

 

ミユキ「あっ、でもこの後は家賃の支払いに行くからダメか。今日は本当にありがとうっ、レンジさん!」

私「ふびぇっ!?」

 

上げたこともない奇声が出た。

蛙を踏んだどころの騒ぎではない。

ミユキの前でモゲる気持ちは抑えられず、奇怪な音に変わった。それほどの衝撃だった。

 

彼女の手には3,000ペソがしっかりと握られていた。

 

『返せっ、それを返すんだっ!』

 

心で叫んだ。それは叫んだ。

彼女の手のペソ札を奪い返したかった。

マニラで最もダサい男になってでも「返せ!」と言おうか。一瞬そう思った。しかし、そんなことは出来なかった。

 

彼女の都合を強引に理解する。

何と残念なことか。

私に非があったのだと思い込もうとするが、すぐには理由を見つけられない。

 

酔いはほとんどないのに、あまりのショックで足もとがフラフラつく。

 

ーー私はエントランスまでミユキに見送られ、グランドヨーコを後にした。

 

マニラのKTV 夜遊び

 

通りに出る。

すぐさま私の姿を見つけ、寄って来るガイド。

ガイド「ミルミルダケ! 5ジマデ!」

 

寄って来るんじゃねぇ。親しく話しかけてくるんじゃねぇ。

世界の終わりを迎えたような私の雰囲気を察しろ。

身も心も財布も全て死んでいるのだ。そっとしておいてくれ。

 

私は彼を手で制しながら、ホテルへ向かった。

しかしガイドはしつこく、結局マビニストリートをずっと私に付き添い、ホテルのエントランスまで付いてきた。

最後は彼を無視し、ホテルの中へ。

 

ーーそして、部屋に戻る。

 

 

午前3時を過ぎた頃。

タバコに火を付けて、この夜を回顧する。

 

どう考えてもアンドレたちに掴まったのが悔やまれる。マカティでの出来事が無ければ、ここまで私の気分は沈んでいないはず。

そのせいもあり、先ほどのグランドヨーコでも、ミユキに対する私の発言には反省するところがある。金銭的なプレッシャーがあったのだろう。

 

…運もなかったか。

元々スタートすらしていなかった。今日もマニラの女で終わり、マニラの女で終わった。しぶとい私、天からトドメを喰らった気分だ。

 

同じようなフィリピン滞在でも、毎回どこかパワーアップして私にダメージを与えてくる。

固定の女性を見つけたと思っても、それを自身が許さないのが原因だとわかっているのに。

このループ、いつまで続くのか。

 

さすがに落ち込んだ私はシャワーを浴び、この日は大人しく休むことにした。

 

ーー午前4時過ぎ。

 

眠れない。

酒が足りなかったか。コンビニへ買いに行こうか。

いや、明日はまたマカティで仕事だ。

このまま休もう。

 

私はベッドで横になり、いつものロナウジーニョのプレイ集を見ることにした。

…癒される。

彼の横幅のあるドリブルが大好きだ。親指と小指を立てる手のアクション。いつも明るい顔面も素敵だ。

 

私は彼のプレーに見惚れ、次第に眠気が出てきていた。

 

そして動画が終わる頃、ディスプレイ上部に現れる新着メッセージを知らせるバナー。

ミユキからだった。

 

ミユキ「今日は本当にありがとうございました! レンジさんおやすみなさい」

 

もう良い。

無視だ。

女性に対して初めての既読無視。

 

 

私「ご飯食べた? おやすみなさい」

 

30秒だけ既読無視してみたが、指が勝手に動いた。

すぐに既読が付き返信が来る。

 

ミユキ「まだ食べてないです。レンジさんは?」

 

私は懲りない。懲りた試しがないのである。

撒いた種はいつか必ず回収できると信じている。

 

そのメッセージを確認し、ミユキに電話を掛けた。

呼び出し音はすぐに消え、彼女の声がした。

 

私「何してるの?」

 

彼女は先ほど家賃の支払いが終わり、今は家で一人だと言う。ルームメイトはアフターかどこかに行っており、まだ家には帰ってきていないとのこと。

彼女は「チップありがとうございました。」、「お腹空いちゃった」と言う。

 

私はこれから食事に行こうと彼女を誘った。

嬉しそうに「行きたい!」の返事。

 

待ち合わせは彼女の家の近く、サークル付近。

私は湿った髪をドライヤーで整え、香水を手首に落とす。

セキュリティボックスの中からペソ札を補給し、エントランスへ降りて行った。

 

ーーホテルのゲートを開け、通りへ出る。先ほどと同じガイドの姿があった。私を見つけ、嬉しそうに声を掛けてくる。

 

ガイド「ミルミルダケ! 6ジマデ!」

 

ずっとホテル前で待っていたのか? しかも、さっきより1時間延長されているではないか。

それでも彼なりに一生懸命。働き者なのだ。彼か彼の大切な人がお金を待っているのだろう。

私は、「ごめん、Next time!」と断り、サークルへ向かった。

 

マニラのクラブ 夜遊びスポット

 

この時刻になっても、サークル付近のクラブは賑やかそうだった。

私はそこを離れ、公園の真ん中でミユキを待った。

 

クラブの中では、今夜も『フィッシング』が行われているだろう。要は『男狩り』だ。ミユキの友達も同じ方法を取ろうとしていたこと、やはり悲しく感じる。

私は遠目にその入り口を見ていた。

ミユキは「私はそんなことはしない」と言っていたが、本当にお金の工面が出来なくなった時にもそれが言えるのだろうか。

今は強がりで言っているだけかもしれない。いつかはそんな日が彼女にも訪れるのかも。

実際、似たような境遇の女性が行き場を失い、クラブの中では今も餌を付けて仕掛けを垂らしている。

 

ーーそして、ミユキが現れた。

ワンピースにヒールのある靴。品のある姿で、サークルの東側から歩いてきた。

 

私「大丈夫?」

ミユキ「お待たせしました! お腹空きましたね、何食べます?」

私「ミユキの食べたいもので。軽いもので良いよ」

ミユキ「そうですね。ちょっと歩きます?」

 

お互い『3,000ペソ』の件には触れなかった。

 

二人で賑やかな通りを外れ、ローカルなエリアへと入っていく。

私とミユキの間には少し距離があった。

 

マニラの路上屋台 バーベキューは絶品グルメ

 

私「この辺りで食べる?」

ミユキ「レンジさん、マニラの食べ物大丈夫なんですか?」

私「好きよ、安いし!」

ミユキ「きゃあ、私も!」

 

夜更け、もう朝方だった。この時間帯に食べるご飯が一日で一番旨い。

ローカルヌードルとバーベキューのセット、最高だった。

特に、バーベキューは今までマニラで食べた物の中で一番美味しく感じた。

 

一人100ペソほどで、心まで満たされる。

このとき、支払いはミユキがすると言ってくれた。嬉しかった。

元の金は私のチップも含まれているだろうが、得意気な表情の彼女につっこみは出来なかった。

 

何より、ミユキと二人で食べるローカルフード、高価な韓国焼肉よりも余程贅沢だった。

 




 

ーー食事も落ち着いた頃、私はミユキに正式に告白した。

 

私「ミユキ、あなたのことが好きです。アプローチ始めてもいい?」

ミユキ「嬉しい! はい、もちろんです!」

私「さっきはホテルになんて誘ってごめんね。またいつかミユキのタイミングを見て誘うから」

ミユキ「そうですね。そう言ってもらえると嬉しいです。こっちも連夜でお店に来てもらっているから、嫌とは言えなくて。あの時は、たぶんレンジさんが帰った後に、お断りのメールをしていたと思います」

私「はは、そうだね。大丈夫。早過ぎたね」

ミユキ「いいえ。私も酔ってたし。レンジさんに失礼が無いようにと思って」

 

私はミユキが本音で話してくれていると思った。

 

私「そうか。でも、一応男として聞いても良いかな。一応ね! 俺、ミユキの彼氏にしてもらえる?」

ミユキ「私、レンジさんのこと嫌いではないです。でも…」

私「でも?」

ミユキ「今すぐに返事はできません」

私「もちろんいいよ、急いでないから。ミユキのタイミングで」

ミユキ「そうですね。次のマニラはいつですか? その時に返事でも良いですか?」

私「いいよ。次のマニラは来週の週末だね」

ミユキ「早っ! ははっ、レンジさん面白い!」

 

私は彼女の笑顔を見ながら、楽しい時間を過ごした。

 

そして、空が明るくなり始めた頃、解散した。

 

ーー空が明るくなり始めていた。

 

『ヤリヤガッターッ』

 

ニワトリの鳴き声。

振り切った明け方に聞こえる幻聴だ。

 

私はコンビニでサンミゲルライトを一本だけ購入し、部屋に戻った。

 

ーー昼前。

スマホのアラームを止める。

目覚めはスッキリ。いつもの二日酔いはこの日も無かった。

 

さて、今回の滞在もあと三日。そして、来週にはまたマニラだ。

とにかく仕事を頑張ろう!

 

その時、電話が鳴った。

マルコからだった。

今日も仕事だと伝えてあるのに。何の用件だろう。

 

少しだけ嫌な予感がした。

 

マルコ「Hey! You’re liar! Fxxkin Liar! I’m so disappointed in you! (おい! 嘘つき! クソったれ嘘つき野郎! 失望したわ!)」

 

強烈な怒号が飛んできた。

 

待て待て、マルコ。

私には心当たりがあり過ぎる。

落ち着け、マルコ。

何の件かまず確認したい。

 

私「Wait, wait! What do you mean? (待って、待って! 何のこと?)」

 

マルコがタガログ語まじりの早口で捲し立ててくる。

何を言っているのか聞き取れなかった。

 

それでも何度か「Girl!」と言う叫びは聞こえてきた。

…どの女性のことだ?

 

そして、電話は一方的に切られた。

 

直後に送られてきた画像。

私が真ん中、両手に複数の美女を抱えている写真だった。

 

女性の数は、1、2、3、…

9人。

 

昨日のマカティ。

真ん中の私、ヨダレを垂らさんばかりの満面の笑みだった。

 

 

最悪だ。

 

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レンジ
オノケンと同じ会社の先輩であったレンジ。数年前からマニラを訪れるようになり、やがて現地法人を持つまでに。趣味は海外サッカーTV観戦。 実体験に基づいたフィリピンにおけるマニラの闇、貧困と格差、現地ビジネスなどオノケンとは違う視点の記事をアップしていきたいと思います。

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