[前回のあらすじ]
フィリピーナ彼女とその家族と共に、フィリピン ダバオ旅行に。父親とは、空港での集合が初対面。レンジは緊張しながら彼に会う。
【レンジブログ102】ダバオ旅行前にフィリピーナ彼女の父親に挨拶
クレイジーマニラの記事は、実際の旅行や取材を元に記述しています。小説風のストーリ仕立てで記述していますので、過去の記事を参照頂けると話の内容が理解しやすいかと思います。また、登場人物の名前等は仮名を用いているところがあります。
[レンジブログ第一章第一話]
【レンジブログ1】日本人経営者と私、フィリピンでの入国審査へ
[レンジ外伝第一章第一話]
【レンジブログ101】フィリピーナをフィリピン国内旅行に誘ってみた
【レンジブログ103】フィリピンでレンタカーを借りて運転してみる
ダバオに到着したのは、昼過ぎの一番暑い時間帯。
日差しが強く照りつけ、滑走路上は灼熱だった。
空港職員が機外へ出る乗客に日傘を貸し出しており、私たちもそれを受け取る。
滑走路の端を歩き、空港内へ。
歩いたのは100mも無かったが、この一瞬で汗が滲むほどの陽気。構内の冷房がありがたい。
ダバオは、マニラより暑いという第一印象だった。
この時、マニラ便の到着直後ということで、荷物受取場は多少の混雑だった。
[ダバオ空港 荷物受取場所]
しかし、マニラ空港ほどではない。
人々は各自の荷物を見つけるとすぐにその場を後にしていき、私たちが最後まで残った。
そして、家族皆が荷物を受け取った後、私にはやるべきことがあった。
『レンタカーを借りる』
である。
今回の旅、私がレンタカーの運転手となり、ダバオ各所へ家族皆を連れていくことにしていた。
私にとって、初めてフィリピンで車を運転することになる。
不安ではある。めちゃくちゃ不安である。マニラでの運転では無いにしてもここは同じフィリピン。
このダバオ旅行まで、来る日も来る日も、
それはもう、
もう、
それは寝たが。
しかし、事故ったらどうしようなど、不安は尽きない。
当初、ダバオ内の移動についてはもちろん「タクシー」を考えていた。
それが、「父親、弟、母親」と旅行への参加者が増えるにつれて、5人揃っての移動がなかなか困難だとわかってきた。
ジャンボタクシーが常に見つかるかわからなかったし、ダバオではGrabタクシー(6人乗り可)も普及しているか怪しい。
普通の状況であれば2台のタクシーを利用するが、これでは「家族旅行」に水を差す。
もちろん、運転手付きの観光バンも候補に挙がった。
しかし、人件費込みの予算は高めだったし、その運転手が我々の会話に踏み込んで来ることは決して気持ちの良いものではなかった。
下手にイケメン運転手でも困る。
これについては、単に私のマルコに対する現地男性への嫉妬心なのだが。
公共交通機関での移動については論外。マルコはそもそもそれらが苦手で、彼女の機嫌が悪い場合には命取りになる危険性もある。
そして、悩んだあげく、
『レンタカーを借りて、私がドライバー』
という策が最善であるとの結論に至ったのである。
父親「Range! Can you drive? License?(レンジ! 運転できるのか? 免許は?)」
私は「国際運転免許」を毎年更新しており、免許については問題ない。
しかし、実際に右車線で運転するのは、二十代の頃に行ったハワイとニ年前に行ったグアム以来である。
しかも、その時は半日もしくは数時間だけの運転であったため、決して外国の道路に慣れているとは言えない。もちろん、日本での所有車は国産車、右ハンドルだ。
私「Of course! No, problem, Papa!(もちろん! 大丈夫です、パパ!)」
私はブスな自信を、親指を立てながら放つ。
マルコの「はぁ? 今、あなた『パパ』って言った? まだ早ぇだろ、ふざけるな。」と言わんばかりの目線は無視だ。
私は、「とにかく任せておきなさい!」と、レンタカーの受付カウンターへ向かった。
[空港出口付近にレンタカーの受付がある]
内心は、ガクブルである。
以前、「ダバオはマニラより運転しやすい」というネット情報を見たことがある。
それを信じるしかない。
いや、信じると言うより、私はその情報に責任転嫁した。
Google先生、投稿主様、頼む。
マニラのような地獄にあらず!
今回利用した「レンタカー予約サイト」は、「holiday autos」と言うサービス。その中で候補に挙がった「AVIS」と言うレンタカー会社。
今回、AT中型車( Toyota Altis )、三泊四日の日程で、レンタカーの利用料金は「12,000ペソ」だった。一日3,000ペソと思えば、タクシー2台を頻繁に利用するよりもお得かもしれない。
[AVIS 受付カウンター。スタッフが常駐している。]
レンタカーの引き渡しは、まず予約メール(バウチャー)を提示、「国際免許証とID(パスポートかフィリピン国内のID)」を合わせて提出。
その後、いくつかの注意事項を説明され、保証金(10,000ペソ程)を一時的にクレジットカード経由で先払する(問題がなければ後日返金される)。
また、スタッフの携帯電話番号を教えられ、事故や緊急の際にはここに連絡しろとのこと。
手続きが終わり、借りる車のところへ向かう。
空港建物に隣接した駐車場に留めてあるとのこと。
レンタカー会社スタッフに誘導されながら、家族と共に荷物を運ぶ。
今回、レンタルしたのはセダンタイプのもの。もちろん、『オートマティック車(AT車)』だ。
[TOYOTA Altis]
私にとっては、左ハンドルかつ右車線の環境ですらモゲそうなのに、もしマニュアル車であればエンストを繰り返すばかりか運転の集中力が散漫になってしまう。
フィリピンでの運転に於いて、ATは不安要素を少しでも削ぐため必須の選択だった。
そしてスタッフが、キズの有無など車の現状を確認している。私はそれをチェックする様子に付き合う。
「もう乗って良いですよ。」とは言われていないのに、家族は勝手に荷物を積み込み、後部座席と助手席へ陣取っていた。
スタッフから車の鍵を渡され、
『燃料満タンで、三日後の同じ時間帯、同じ場所』
に返却する旨を説明される。
そしてその時は、同じくスタッフも空港で待機しているので、カウンターに来るか、直接携帯電話へ連絡してほしいとのこと。
スタッフ「Good luck!(良い旅を!)」
さて、運転だ。
私は「いつか、マルコとドライブデートが出来たら嬉しいな。」と素朴な夢を持っていた。
今、その夢が叶う。
後部座席に邪魔者、いや、彼女以上に大切な家族も乗せることは想定していなかったが。
助手席のマルコはスマホでお気に入りの音楽を聴いていた。画面を見つめる横顔からは、外の風景を楽しもうとする雰囲気はない。全てに興味がなさそうで冷静なものだった。
父親と母親は、さすがに初めての土地に興奮気味だった。テンションは高く、ウキウキしている様子が伝わってきた。
弟は「この外国人、運転大丈夫なのか?」と不安げな様子で前を向いていた。加えて、ルソン島以外の場所が初めてな事もあり、口数は全くない。
大丈夫だ、少年。安心しろ。
私は見た目こそ太ってはいるが、実は「器用」なのだ。
もし、誰かに特技を聞かれたら、こう答えるだろう。
『車庫入れです。一発です。』
と。
とにかく運転は任せたもう!
皆、シートベルトは締めたか、行くぞ!
キーを差し込み、エンジンを掛ける。
ブルルンッ!
さぁマルコよ、我に惚れ直せいっ!
私は車を発進させた。
[駐車場出口]
しかし、さっそく駐車場を出ようとした時、
私「あ”っ!?」
…ワイパーが動く。
雲はあるが晴れている。
好天の下、進むセダン。その車内が瞬時に静まりかえる。
雨など降っているはずもない。
乾いたガラスを擦るワイパー。
なぜにっ!?
訳がわからず、その場で急ブレーキをかける。
慌ててバックミラーを見て、後続車の有無を確認する。
しかし、否応が無しに少年の顔面が目に入ってくる。
その顔は歌舞伎演舞中かと思うほど曲がっていた。
父親「Range?(レンジ?)」
私の背後から、父親が「雨か?」と聞いてくる。
私は、左折で駐車場を出ようとしたところ、ウィンカーを出したつもりが、右レバーがワイパー仕様だったのだ(外国車と日本車は、ウィンカーレバーとワイパーレバーが逆配置)。
私(心の中)「くそぉぅうっ!!」
こんな初歩的なミスを、肝心な初発進で踏んでしまうとは。
恐る恐る隣のマルコの様子を伺う。
マルコ「Are you Okay?(大丈夫?)」
彼女はむしろ「なぜ急ブレーキしたの?」と、そちらを心配していたようだった。動いていたワイパーは見られていない。
私「ごほんっ! Yeah, no problem.(ごほんっ! ええ、大丈夫です。)」
私はハンドル奥のレバー表示を確認し、今度は正しく左レバーを指で弾く。ワイパーは動かず、ウィンカーが点滅する。
私「ごほんっ!」
そして、私たちの車は静かに空港を後にした。
明けましておめでとうございます。
今年も楽しみに読ませて頂きます。
通りすがりさん、コメントありがとうございます。
今年も皆さんに楽しんで頂けるよう頑張ります。
よろしくお願いします。
ウィンカーとワイパーのレバーが逆の件、共感しました。
以前仕事でサイパンに住んでいたのですが、最初の頃に俺もやらかしました(笑)
1話から全部読ませてもらっていますが、俺もちょくちょくマラテに滞在するので、読んでいて面白いし、勉強になります。
TOMさん、コメントありがとうございます!
ですよねー。慣れたら何てことはないのですが、最初は焦りました笑