フィリピーナのお母さん

 

[前回のあらすじ]

日本人のフィリピンパブで出会った女性と、マニラでディナーデート。日本とは勝手の違う状況に少し戸惑うレンジ。ディナー終盤に彼女をホテルへ誘うと、「Yes.」の返事をもらう。

[前回記事]
【レンジブログ128】ディナーにて超美人フィリピーナをホテルへ誘う

 

クレイジーマニラの記事は、実際の旅行や取材を元に記述しています。小説風のストーリ仕立てで記述していますので、過去の記事を参照頂けると話の内容が理解しやすいかと思います。また、登場人物の名前等は仮名を用いているところがあります。

 

[序章第一話]
【レンジブログ1】日本人経営者と私、フィリピンでの入国審査へ

[第一章第一話]
【レンジブログ33】プライベートフィリピン女性との深夜デート。マラテのディスコ EXKLUSIVE へ

[第二章第一話]
【レンジブログ51】マニラのフィリピーナが初めて日本の地方都市に来る

[第三章第一話]
【レンジブログ71】マニラでビジネス開始。フィリピーナのコンサルティングで法人設立。

 

レンジブログは第三章で完結しています。

それ以降のエピソードが「オノケンブログ」の内容になります。

[オノケンブログ第一話]
オノケンブログ第一話「転落と後悔」

 

また、レンジ個人のその後のエピソードは「外伝」という形で記述しています。

[外伝一章第一話]
【レンジブログ101】フィリピーナをフィリピン国内旅行に誘ってみた

 

 

【レンジブログ129】ホテルで一変、フィリピーナから詐欺に遭う?

 

ーー私たちはレストランを出た後、Grabを呼び、一緒に乗り込んだ。

時刻は午後9時を過ぎた頃。周辺の渋滞は緩和されつつあったが、金曜の夜。普段よりは多い交通量だった。

 

車が大通りに入った時、私は彼女の手を握った。

 

彼女はそれを拒否しなかった。

そればかりか、強く握り返してくる。

先ほど聞こえた君が代は空耳ではなかったようだ。

 

そして、これから聞くのは試合開始前の国歌になるだろう。がははっ。

 

調子に乗った私はミカの肩を抱き、髪の毛の香りを嗅ごうとした。

 

ミカ「No!(止めて!)」

 

ぶふぇっ!

えっ、これ拒否られる? 手はOKなのに?

キスをいきなりされると思ったのだろうか。こちらが焦りすぎたか。

 

私はミカの心境が分からず、お互いに困惑する。

これからホテルなのに、もう出鼻を挫かれたどころか、鼻骨をクソ殴られた気分だった。

 

ただ、彼女の表情は柔らかかった。以後気を付けよう。

私は彼女の趣向を早く掴もうと必死だった。

 

ーーホテルに到着した。

 

ドアを開けてくれるボーイのおっさん。

「さすがっす。パネぇっす」

「そうだろう? 今夜も良い女だろう?」

私たちはいつものアイコンタクトを交わした。

 

マニラのホテル 夜遊びスポット

 

そして、ミカを私の部屋に通す。

私と同じく、彼女は緊張しているようだった。

 

ベッドに腰を降ろす彼女に「まずはお酒でも飲みますか?」と聞いてみる。

 

ミカ「No thank you. (結構よ。)」

 

おっ、おう。

彼女は本当はお酒が苦手だと言う。オーケー、オーケー。そう言うこともあるだろう。

私は話題を切り替え、彼女の母親について振った。

彼女の表情は平常に戻り、ここからしばらくプライベートな話を聞く事が出来た。

 

ーー日本に帰ってからは、母親のビジネスを手伝っていると言う。不動産の仲介業らしい。

聞けば、母親はなかなかのやり手らしく、分譲地の仲介人として今は一家を支えているのだと言う。

私「I respect your mom. That’s great! (あなたのお母さんを尊敬します。本当に凄いですね!)」

ミカ「Yes. I sometimes help her. (はい。時々お手伝いしています。)」

私「Yeah. That’s good. (ええ。それは良いね。)」

ミカ「Actually, today was very busy for us. Coz we must pay deposit of 100,000peso for the new land in lots.(実は、今日はとても忙しかった。新しい分譲地に100,000ペソの手付金を支払わなければならなかったから。)」

私「I see. You must be tierd. (そうか。疲れているね。)」

ミカ「It’s okay. We have solved the problem.(大丈夫よ。もう解決したから。)」

 

私は彼女の話を聞きながら、正直どうでも良かった。

興味があるのはただ一つ。

今夜、私とミカの試合が行われるのかどうかだ。

 

ホテルの一室で、私の探りは続いた。

 

マニラのおすすめホテル「リヴィエラマンションホテル」

 

ーーそして、日付が変わろうとした頃。

彼女のアクビを見たときだった。タイミングを見計らって彼女に声を掛ける。

私はいつものキックオフの笛を鳴らした。

 

私「Do you take a shower? (シャワー浴びますか?)」

 

ミカはまっすぐ私の目を見ていた。

 

ミカ「Did you listen to my story?(私の話を聞いていたの?)」

彼女の表情が怒っているように見えた。

 

私「What? (何?)」

ミカ「I told you. (言ったでしょ。)」

 

意味が分からなかった。彼女は私に失望した様子だった。

これはまずい。試合開催確率が一気に0%へ。

室内の空気が冷め切ったのを感じ、私の心は折れかかる。

 

しかし、何とかこのチャンスをモノにしなければ。

私「I have a question. Can I be your boyfriend? (質問があります。私はあなたの彼氏になれるの?)」

 

ミカの表情に変化はなかった。

 

ミカ「I told you. You must see my mother at first. And then, everything will start. (言ったでしょ。最初にお母さんに会ってからでないと。そしてそれから全ては始まります。)」

私「Oo, okay. So when can I see your mother?(オッ、オーケー。つまり、いつお母さんには会えるの?)」

ミカ「Ah… Wait. (あー…。 待って。)」

 

ミカはスマホを取り出し、何処かへ電話を掛け始めた。誰に掛けているのだろうか、もう夜中だが。

 

テレビ電話で話し始めた相手は母親だった。

そして、母親からの指示だろうか、イヤホンジャックを私に預けてくる。

 

私「Hi, Mom! Good evening, how are you? (やあ、お母さん! こんばんは、元気?)」

 

 

母親はスピーカーで話しているため、やはりその声は聞き取りづらかったが、「今日は手付金の受け渡しで忙しかった」とミカと同じようなことを言っていた。

 

私「I see. You work very hard. (わかりました。あなたはとても頑張っていますね。)」

母親「Yes! You know I’m retirement generation. But I work very hard even now.(そう! 私はもう退職世代でしょ。でも今も一生懸命働いているの。)」

私「I know. I respect you. Good job mom.(わかります。尊敬します。頑張っていますね、お母さん。)」

 

もう退職だと?

見た目が50代の彼女の言葉には違和感しかない。

私は話を聞いてとりあえず同情し、母親のご機嫌を取った。

 

母親「And you live in Manila? I think you need house with Mika here.(そして、あなたはここに住んでいるの? 私はミカと一緒に住む家が必要だと思うの。)」

私「Haha. I’m not yet… No, of course I wanna buy house for her. But someday.(はは。私はまだ… いいえ、もちろん彼女のために家を用意したいですね。でもいつかです。)」

母親「Nooouh, everything isn’t too early. Right?(いいえー、早過ぎることはないわ。でしょ?)」

私「Haha. I understand. (はは。そうですね。)」

母親「You love her? You should buy house for her. It’s the best way of approaching her. (彼女のこと愛してる? 家を買うべきよ。それが一番の方法なんだから。)」

私「I wanna do like that as her boyfriend or husband someday. I really wanna try. But not now. (彼氏か夫としてそうしたいです。本当にそうしたい。でも、今ではないです。)」

母親「Noooouh, I like you. I advice you. That’s why. Everything can’t wait you. You know that…(いいえー、私はあなたを気に入りましたよ。アドバイスしています。だからです。全ては待ってくれないわ。知ってるでしょ…)」

 

これは一体何なんだ。

新手の押し売り商売か。私はカモにされているのか。

保険屋の娘と結婚話になっているような感覚だった。

いきなり保険を掛けられても損しかないことは誰もが知っている。家などそれ以上の話だ。

 

しかしどうしてもミカと一戦を交えたい私は、母親の機嫌を損ねないよう話を受け流した。

 

そして、電話をミカに替わるよう促されたので、彼女に渡す。

ミカと母親はそれから10分ほど話し込んでいた。

 

ーー電話を切ると、ミカが私に迫ってきた。

急展開だった。

フィリピンの枕営業にはこんなスタイルがあるのか?

 

ミカ「Range, you love me? (レンジ、私のこと愛してる?)」

私「Yes!(はい!)」

 

彼女の黒い瞳の奥には私ではなく、ペソ札が映っているような気がした。

おそらく母親とは、私に「経済力があるかどうか」を相談したのだろう。

ホテルに男と二人きり。値踏みするのはわかる。女性も相応の覚悟の上だろう。

もう私のことがお金に見えていたとしてもしょうがない。それよりも私は、どうしてもミカとワンチャン達成したかった。

『我慢汁の水たまり』と言う表現はもう二度と使いたくない。

 

キスをしようとした瞬間、彼女の勢いが突然止まった。

 

ミカ「I have something to tell you. (ちょっと話があるんだけど。)」

私「What? (何?)」

 

そして、出てきた言葉は何となく予想できたものだった。

 

ミカ「Can I borrow to you? (お金貸してくれる?)」

私「What!? (何!?)」

ミカ「But please listen. (でも聞いて。)」

 

彼女はベッドから離れ、鞄に忍ばせておいた何枚かの資料を見せてきた。

 

フィリピン 土地 分譲地
[その時の資料の一部。後日、スキャンデータが送られてきたもの。]

 

ケソンシティのとある分譲地の資料だった。

ミカのしたたかさに驚かされながらも、その書類を手に取る。

怪しい。

一応、不自然な点が無いか確認する。

私もフィリピンの不動産について全くの無知ではなかったので、ミカの嘘が普通のレベルなら見抜ける。

お酒が入っていなかったことが幸いした。

もし酔っていたら、彼女の色仕掛けも手伝い「俺のサインで良ければ」と口走っていたかもしれない。

 

しっかりと資料を確認し、彼女の話を聞く。

 

ーーしばらく説明を受けたが、どうやら全て事実のようで、私への気持ちも真剣なことは間違いないようだった。

ミカにも資料にも不審なところは特にない。

疑い過ぎか。

 

いつの間にか、私の方が申し訳ない空気になってしまった。

 

分譲地についてはほとんどがミカの母親所有になっていて、残すはあと一区画だと言う。

 

フィリピン 土地 分譲地 資料

 

ミカ「Tomorrow is the date of payment for another land deposit. Only 100,000peso also. (明日はまた新しい土地の手付金の支払い期限です。また100,000ペソ。)」

私「100,000peso!? Now? I don’t have so big cash. (100,000ペソ!? 今? そんな現金持ってないよ。)」

ミカ「But please don’t worry. We can sell the land soon. So we can earn more.(でも心配しないで。私たちはすぐにその土地を売れるし、もっと稼げる。)」

私「Yeah, of course. I trust you. (ええ、もちろん。あなたを信用しています。)」

 

単純に今は100,000ペソも持っていない。日本円でも同じだ。ただし、ATMに行けば、VISAのカードが使えるが。

 




 

男の下心と言うものは果てしなく深くしつこい。

家を買うという話は前向きに捉えよう。これは未来への投資だとも一瞬思った。

 

『ミカと将来一緒に住む家の土地を買った』

 

これくらい男の甲斐性で出来なくてどうする。

彼女の愛をお金で買うんじゃない。お金を出したら、より深く愛してくれるようになるんだ。

 

ミカ「Please, Range. (お願い、レンジ。)」

 

私は正直悩んだ。

彼女の体に吸い寄せられる魔力を感じた。

 

でもダメだ。

基本的に相手の身元確認から出来ていない。全く話にならない。実の親子もわからないし、そもそもあなたたちは誰だ。私は何を考えているんだ。

こんなわかりやすい手口に引っかかるとでも思っているのか。

 

私「I understand. But I can’t. (わかりました。でも、出来ません。)」

 

それを聞いたミカは「Wait.」と言い、再び母親に電話をかけ出した。

私が「If I rent, can I sleep with you tonight? (もし貸したら、今夜は一緒に寝られる?)」と聞けば話は早かったのかもしれない。

しかし、おそらく無理だ。

彼女にその気はないとはっきりしたし、私にもその気が消えていた。私もそこまでアホではない。

 

すると、電話の途中で彼女は私を呼んだ。

 

ミカ「How’s 50,000p?(50,000ペソは?)」

はっ、半額になった?

なぜだ?

 

私「No, I can’t.(ダメ、出来ません。)」

 

こう言いながらも私は悩んでいた。

どうせ日本円で100,000円。それで彼女と明るい未来が見通せる可能性があるなら、それでも良いではないか。

いやいやいや。

お金に困ってないならなぜ日本にいた?

娘を働かせて、自分もお金の工面が出来ていないと言うことは、母親も懐事情は厳しいはず。

すぐにお金を返すと言ってその意志があったとしても、おそらく無理だ。

何も得るものはない。

 

私の動じない意志を悟ると、ミカの態度は一変した。

 

電話を切った後、私に

「クソったれ、オヤジがっ! お前には金しかねぇだろっ!」

のような暴言を吐いた。

 

そしてバッグを持ち、そのまま部屋を出て行く。

私は何も言い返せず、彼女の後ろ姿を見送るしかできなかった。

 

ーー彼女の放った言葉の意味を遅れて理解した。

 

私は泣きそうだった。

このとき生まれて初めて女性の連絡先をブロックした。

 

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レンジ
オノケンと同じ会社の先輩であったレンジ。数年前からマニラを訪れるようになり、やがて現地法人を持つまでに。趣味は海外サッカーTV観戦。 実体験に基づいたフィリピンにおけるマニラの闇、貧困と格差、現地ビジネスなどオノケンとは違う視点の記事をアップしていきたいと思います。

2 コメント

  1. さすがレンジさん。あっぱれ?

    その女性には3000peso以上を払う価値はないですね。

    マリーの方がかわいく見えました?。

  2. 匿名さん、コメントありがとうございます。
    そうですね、3000pesoジャストだったら渡していたかもしれません笑

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