名古屋空港 フィリピン マニラ

 

「レンジさん、早っ! チケット取るの早っ! しかもホテルまで」

「うん。いつものバーチタワー、JMM取ったよ」

「好きですねぇ。僕はバスタブ欲しいのでリヴィエラですかね」

 

いざ日程が決まると事は一気に進んだ。

渡航まで約一月。私とケンさんはそれぞれ野心を抱き、再びマニラへ向かい始めた。

 

 

【レンジブログ202】マニラへ出発、目的はフィリピン女性との結婚!?

 

 

ーーすでにチケットもホテルも押さえた。後はマニラへ向けて飛び立つだけである。

しかし、どうしても気分が乗らない。目的が特に無いからだ。

もちろん、ケンさんと街を歩き、夜遊びして日頃の鬱憤を晴らす。それは大きな楽しみだ。私はブヒブヒ言って彼はウホウホ言って何のこっちゃ分からないだろう。

おそらく私のことなので、深酒をして周囲がドン引くほどの醜態を見せるはずだ。結果楽しんだのは私だけというパターンは目に見えている。

 

「今、マニラは入れ喰いでっせ」

この情報は各所から入電していた。ロックダウン後、繁華街で働いていた女性たちの多くは田舎へ帰った。そして状況が落ち着き、パンデミック後には新しい女性たちが働き始めたと。人々は困窮しており、何が何でも外国人の上客を捕まえたいと躍起になっていると。

ただし、治安はそれなりに悪くなっているらしい。耳に入るニュースは以前からあったような事案ばかりだが、被害の対象となる旅行者の絶対数が少ないので必然的に危険に遭う確率は上がる。

私の場合、人より引き寄せるパワーが先天的に強いのでトラブルは必至かもしれない。

 

ーーマニラへ再び向かうことは決まった。

覚悟も決めた。

だからこそ何か目的が欲しい。

 

現地で会いたい人…… 例えば、生き残ったKTVのスタッフや女性たち、顔なじみのガイドたち。

現地で食べたいもの…… ジョリビーかミニストップのフライドチキン。デイビッズの五目チャーハンとブロッコリー牛肉。串まさのダブル餃子定食。バブイバーベキュー、シシグ、アドボ、シニガン。

現地でやりたいこと…… LAで夜遊び作戦会議。新規KTV開拓。ゴーゴーバーに入ってしこたまパンツを濡らす。ローカルマーケット徘徊。パサイやクバオのバー巡り。マヴィなど普通のマッサージ。

などなど、考え始めたらめちゃくちゃある。

しかしこのご時世、気軽に海外へという訳にもいかないし、どれも私の動機を刺激するものではなかった。

と自分の中で潮目が変わったのか、血迷ったのか、『これしかねぇ!』と思い付いた。

 

これを機に結婚するか!

 

マリーと結婚しよう。

そもそも私は彼女が理由でマニラへ通い始めた。ヒロインを救い出すため舞い降りた。まだストーリーは完結していない。出会って長い月日が経った。少しだけ紆余曲折あったが全て必要な過程だったと理解しよう。

完璧に今がその時だ。

 

ーーマリーに電話を掛けた。

 

「I’ll go there to see you. (君に会いに行くよ)」

「Really!? I’m so happy, excited! (本当!? 財布がやってくるぜっ!)」

「Marry, will you marry me? (マリー、結婚してくれるよね?)」

「Yeah, I told you. I’m just waiting for you. (おう、言ったやろ。ワシは待っとるんや)」

「I’ll bring some documents. Let’s go to embassy of Japan together then. (書類を持っていくよ。一緒に大使館へ行こう)」

「What!? (何っ!?)」

「Family register, passport and other official documents. (戸籍謄本、パスポートその他公文書)」

「Are you sure!? (正気かっ!?)」

「Yes. And I think you need birth certificate, no marriage record or something. (はい。あなたも出生証明、独身証明とか要るでしょ)」

「Oh my gosh! Yes, Yes! (バカか! そうだよ!)」

「Haha. I’m sorry for the wait. (ははっ。待たせてごめん)」

「It’s okay. I love you so much Range! (待たせ過ぎだろこの野郎!)」

 

ということで、彼女と正式に結婚するため必要書類その他準備を始めた。

 

ーー出発日。私は一足先に名古屋駅に到着した。

汗を押さえながら改札の中のカフェに入った。

「もう着いたよ。コーヒー飲んで待ってる」

「僕もあと10分くらいで着きます!」

あれだけ楽しみにしていたケンさんより私の方が早く駅に着くとは。昨夜は複雑な思いを残したまま眠りに就いたが、今朝は目覚め良く体調も万全。

大丈夫だ。覚悟も揺らいでいない。

 

「改札入りましたけど……  レンジさん、何処ですか?」

背の高いマッチョがガラス越しに見えた。

「今ケンさん見えたよ。右、右手のカフェの中」

「えっ、何処ですか?」

なぜかケンさんは逆方向の改札方面へ向かっていった。

私は「後ろ! そう後ろのカフェ。ほら! あー、違うそっちじゃない。南よ、南! そっち北。違う、改札の方は東! 右を見て右!」と、上下右左にゴリラを操作した。コントローラーぶっ壊れてんのかと思う程とんでもない方向音痴だ。

「レンジさん、ごめんなさい。分からないです」

未踏のジャングル彷徨ってんじゃねぇんだぞ…… 諦めた私はカフェを出た。

「こっち! 元気そうだね」

「レンジさんも!」

久しぶりに彼の顔を見ることが出来て嬉しかった。

「でも見てよこの人混み。感染するとしたら絶対日本じゃん。PCRマジ不安だわ」

「何言ってるんですか。明日の早い時間帯でチェック行けば大丈夫ですって」

7月下旬から日本での陽性者は日に20万人を超えていた。渡航直前もピークが見えない。

いつもならマニラへ向かう際は前夜祭のような感覚だ。しかし今回は色々と心配事が多い。治安に感染症、無事に帰国出来るかどうかーー。

 

「ほらレンジさん、行きますよ!」

特急に乗り、空港へ向かうまでケンさんと近況を報告し合った。

話題は絶えない。空港へはあっという間に到着した。

 

ーー当然のように閑散としている国際線のフロア。

「ほらケンさん、こっちだよ!」

私のテンションはいよいよ乗ってきた。いつもの調子が戻ってきたようだ。海外旅行へ、冒険へ向かう。このワクワクは一体何なんだ。エナジーが漲ってくる。

セブパシフィックのカウンターへ着くと20名ほどの列が出来ていた。手前では数人がスマホを操作している。フィリピン入国に際して、ワクチン接種状況や健康状態についてWeb申請とQRコード取得が必要らしい。

私たちも提示された手順に従いコードを取得した。

 

ーーチェックインを済ませ、搭乗口へ。

昼前だったので近くのレストランでランチ。二人とも唐揚げ定食をオーダーした。一人1,000円。

名古屋空港 マニラ 搭乗口 ランチ

 

「レンジさん、相変わらず喰うスピード遅いっすね。そろそろ時間来ますよ」

「最後の晩餐くらいゆっくり喰わせてよ」

「ははっ、懐かしいっすねそのフレーズ。今思い出しましたけど、僕飛行機苦手なんですよね」

「めちゃくちゃ揺れれば良いさ、ははっ」

乱気流が続いてションベン漏らしてウホウホ胸を叩いとけ。私はもうすでに集中しているんだ。全力で今回のマニラ旅を楽しむと。

歌いまくって酒浸りになって『本来のマニラ夜遊び』を満喫するつもりだ。強くてニューゲームも上等、フルでそのアドバンテージを使おうじゃないか。

ケンさんは確定されたハナという恋人が居る。そりゃもう生殖器が機能を失うほどヤリまくればいい。

いや、どうせならワンチャン出来ないパターンも面白いのだが。あんだけイキっておいて「ノーチャンスでした」みたいな展開を期待する。その時は同情する素振りをして全開で爆笑してやるぜ。

だって確約されたワンチャンが待ってるなんて何も面白くないだろ。

華麗にフラれる…… 叶わないかもと諦めかけた時にようやく…… 想像を超える出来事が多発するからマニラは面白いんだ。ドキドキハラハラが凝縮された旅こそ真骨頂。

女性と新しい出会いがあるかもしれないし、不発に終わるかもしれない。それが魅力。

私にもマニラに大切な人が居る。

しかし、それはそれ。家族になる女性と恋人はまた違う話だ。

 

ーー搭乗開始。

機内は空いていたためか予定より少し早く滑走路へ。

マニラに向けて離陸した。

 

 

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レンジ
オノケンと同じ会社の先輩であったレンジ。数年前からマニラを訪れるようになり、やがて現地法人を持つまでに。趣味は海外サッカーTV観戦。 実体験に基づいたフィリピンにおけるマニラの闇、貧困と格差、現地ビジネスなどオノケンとは違う視点の記事をアップしていきたいと思います。

8 コメント

  1. 始まりましたね👍
    こうしてみるとそれぞれモチベの持ち方が違って面白いですね🤩
    一緒の行動が上手くいくのか楽しみですね✨

  2. 英語の訳し方バグりすぎでしょ。
    集合の時は、本当にどこかわからなかったです。私じゃないです。レンジさんのコントローラー捌きが悪かったのです。まるでバイオ2を始めてプレーした時みたいにぐるぐるなってましたし。

  3. おはようございます、半分くらい盛ってるのか?と言うくらいバグった内容でしたね(笑)レンジさんらしい開幕かな(笑)
    行く前に目的を決めるのは普通ですが、まさか結婚とは(꒪˙꒳˙꒪ )ワオ
    今後の展開が楽しみです

    • いつもコメントありがとうございます!やる事が無ければのんびり出来るのに、なぜかやる事見つけて自分で忙しくなるよう仕向けてしまいます!

  4. いやあ、おもしろかったです。僕は5月31日から6月24日までマニラとカガヤンデオロに行っていましたが、レンジさんや、ケンさんのような感じでした。久しぶりにマニラについて、フィリピンの彼女そっちのけで、ソッコウでLAにいきましたよ。連載、頑張って下さい(#^.^#)

    • 大祐さん、コメントありがとうございます。まさに私たちも同じくLAに向かいます笑。今後ともよろしくお願いします!

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