日本に帰ってもリョウコとの連絡は毎日のように行っていた。
私の仕事が終わる少し前の時間帯から彼女は起床し、そして仕事に向かう。私が家でのんびりとしている時間帯に彼女は仕事をしていた。
そのため、連絡を取り合う回数は決して多くはないが、その分、一通一通を大事に連絡していた。
LINEを使った英語での連絡は非常に便利だった。話されたらとても理解しきれない内容であっても、翻訳アプリなどを使うことで理解することができる。
また、自分が話したい内容も、普通の会話ではとても言葉にできない内容でも、ゆっくりと時間をかけて考えることができるからだ。
さらに実際に英語を日常的に話している人と連絡を取り合うことで、“生きた英語”を身につけることができる。
もちろん私の時代でいうと中学校からの英語の基礎は大前提として必要だが、実際に話すときは学校で学んだ英語だと、正しい形ではあるが、文章が長くなったり、友達同士なのに丁寧すぎる言い方になったりと、実際の会話の中では使えないような表現も多く習っていたことにも気がつく。
特に私の場合、海外で仕事をしたいわけでも、TOEICなどの試験で点数をとりたいわけではないため、少々崩れていても伝えることができる英語が身につけば十分なのである。
もちろん、それなりに話せるようになっている今でも毎日の基礎の勉強は怠らない。何事も基礎があってこそである。
リョウコからの連絡もすごく簡単に伝えてくることも多く
“こんな簡単な言い方でいいんだ”
と感じることも多くあった。
今までにも何回か言っていると思うが、私は筋トレが好きで、ボディコンテストにも出場している。自他ともに認める脳筋である。
フィリピンから帰国したときは大会まであと一ヶ月程度であった。このときは既に減量期であったが、フィリピンではたくさん食べ、たくさん飲み、しかもトレーニングもしていない。私は、フィリピンでの減量の遅れを取り戻すために、辛い食事管理と筋トレに日々明け暮れていた。
リョウコにも減量(彼女の場合はダイエットといったほうが良いだろうが)の経験があるため、その話題ではあまり普段はおしゃべりではないリョウコがよくしゃべるようになる。
リョウコは応援しているといつも励ましの連絡をくれていた。
リョウコのおかげで辛い減量期もがんばることができていたし、リョウコによい結果を伝えたいがために、努力と我慢を積み重ねていた。
当時の私の中ではリョウコの存在は大きな支えになっていた。
順調に思えた私たちの関係に陰りが見え始めたのは帰国後2週間ほど経ったときのことだった。