【レンジブログ193】KTV『526』で働くフィリピーナと恋愛相談

 

 [レンジブログ 前回のあらすじ]

今から数年前、レンジがマニラでビジネスをスタートさせた頃、オノケンをフィリピンへ誘う数か月前のエピソード。
フィリピーナ彼女のサン。レンジの言動に激高し、キッチンにて刃物を持つ。レンジは必至の説得を試みるが、その夜再び彼女の暴走が始まる!?
【レンジブログ192】フィリピーナの激情に振り回される日本人男性

 

 

クレイジーマニラでは以下の三つのブログがメインコンテンツです。
平日に『小説ブログ連載』、週末は『トピックス（コラム）』をアップしています。

現在は【レンジブログ外伝五章】を連載中です。

 

[筆者レンジより]

読者の皆さんへ。

いつもクレイジーマニラをご覧いただき、本当にありがとうございます。

また、コメントをくださる方々、ラジオを聞いてくださる方々、いつもありがとうございます。

 

ーーさて。

前回の記事では、フィリピーナの過ぎた愛情に振り回される私の様子を描きました。

実際にはもう少し激しい修羅場で、落ち着かせるにはかなりの時間が必要でした。

そして、次の日。

彼女から不吉なメッセージが入ってきます。急いで自宅に戻りますが、彼女の姿はありませんでした。

 

それでは、レンジブログ193話をスタートいたします！

 

 

 

 

【レンジブログ193】KTV『526』で働くフィリピーナと恋愛相談

 

 

ーー午後９時過ぎ。

私はサンを探すため、外出準備を始めた。

もし、KTV『526』に彼女が出勤していれば安心なのだが。その場で話をしよう。

 

しかし、出勤していない場合。

これはもうどうしようもない。彼女からの連絡を待つしかない。

その場合は他の夜遊びへ行こう。

ぐふふふっ。むしろ、それを願う。

マリーやザリに会いに行くのも良いが、新たな出会いを探しに行っても良いな。

マルコについては、平日は彼女も忙しい。来週末のデートを約束したのでとりあえずOKだろう。

 

ーー私は、念入りにシャワーを浴び、髭を剃り、髪を整え、香水をサッと纏う。

 

よっし。平日のブスルーティン開始。

毎晩女性を探すのである。未だ見ぬ女性が何処かで待っているはずだ。

 

私は外へ出て、徒歩でマビニ通りを北上し始めた。

 

[マニラのマラテエリア　マビニ通り（この頃は通りに呼び込みの女性が多数立っていた）]

 

ーー途中、日本食レストランで腹ごしらえをする。

そして、中心部に入ると、周囲は大変な賑わいとなる。これがほぼ月曜から土曜まで続くのだ。

日本の連休時などは日曜夜すら大騒ぎだ。

 

私はこの喧騒が大好きだった。

入る気も全くないのだが、店前に立つ女性たちに声を掛けられると、ついデレデレと会話してしまう。

たまに「アナタ、シッテル、パルパロ！」とフザけたことを抜かす女もいるが、笑顔で無視だ。

そんな絡みがとても楽しい街である。

 

（昨年夏より、行政の指導によって外での呼び込みが制限された。一時的に賑わいが減ったように思われたが、店内は多くのお客さんの姿があった。しかし2020年3月から、コロナ禍の影響は甚大で、しばらくこのような賑わいは期待できないだろう。）

 

［当時のマビニ通りの様子］

 

ーー左側の歩道をこっそりと進み、５２６の前へ。

ドアマンと目が合うと、彼は笑顔で返し、エントランスのドアをノックした。

 

入店すると、ずらっと背の高い女性に囲まれる。まるでバレー選手の一団。皆さんロングドレスを着ており、モデルさん、女優さんのように綺麗だ。

 

私はその場で、「すいません、サンは出勤してますか？」と聞いた。一応、エントランスに居る女性たちの顔も確認するが、サンの姿は見えない。

 

ボーイは「ボス、もしかしたらドレッシング中か、二階で接客中かもしれません。どうします？」と言う。

私は「じゃあ……　はい。一階で」と、ワンセットだけなら良いかと席に座った。

 

[５２６一階BOX席］

 

ーー店内は時間帯も早いためか静かだった。

私は席に着き、ドリンクとサンのリクエストを伝えた。

喉をアルコールで潤しながら、タバコに火を点ける。

そして、サンに「５２６に来たよ」とメッセージを送っておく。

 

しばらくすると、ローテーションのヘルプ女性が挨拶に来た。初対面の人だ。

これまたとんでもない美女である。

小麦色の肌をした健康的な印象の女性。顔つきはスペイン系のフィリピーナ。この日、初めての勤務で初接客だと言う。

出身は『バランガシティ』。私は聞いたことがないところだったので、スマホのグーグルマップで検索すると、ちょうどマニラ湾の反対側にあるようだ。

彼女は「趣味はハイキングと登山なの」と言う。

なるほど。近くに大きな山がいくつか確認できる。きっと自然豊かなところなのだろう。

 

ここで働き始めた理由を聞くと、「普段は各国でモデル業をしている。今はマニラでイベント中なのだが、実家が近いため、休みをもらっている」とのこと。

また、ミスユニバースの予選にも出場した経験があるらしい。フィリピンの代表にはなれなかったが、ファイナルまで進んだこともあると言う。

 

ほへー。

これは本格的なモデルさんだ。聞くと、日本にもモデルイベントで訪れたことがあるらしい。

稼ぎは……　ここでバイトをするのだから、結局家族を養っているか、十分ではないのだろう。

 

ーー私は彼女の話を聞きながら、ゆっくりとウィスキーを煽った。

 

[５２６ではフードメニューも充実している]

 

彼女と20分ほど会話していると、次のローテーションとなった。

新しい女性が来た。

おっ、彼女は何度か顔を合わせたことがあり、私とも親交が深い。この526でも勤務が長い女性だった。

 

同時に、ボーイが膝をついて私に声を掛けてきた。

「ボス、サンは今日は出勤していません。しばらく休むと聞いています」

「えっ、そうなの！？　……分かりました、ありがとう」

 

そうか。サン、何処へ行ったのだろう。

私は追加メッセージで「あなたは出勤してないね。どこに居るの？　会いたい」と送っておいた。

んー、心配だ。

 

ーー私は、顔なじみの女性と会話をスタートさせた。

彼女とは気心知れた中である。と言うのも、先日のアフターでも一緒だった女性で、ここのママの舎弟だ。

 

「Hi, Range. (こんばんは、レンジ。）」

「Hi, how are you? （こんばんは、元気？）」

 

彼女は私がサンにアプローチしていたことを知っている。

私はここまであったことを彼女に相談した。

サンと交際を始めたこと、ツーショット写真が元でトラブルになったこと、今夜彼女に会いに来たが「しばらく休むらしい」と言う事情の概要を伝えた。

 

「Range, maybe I think Sun is young. （レンジ、おそらく、サンは若いのよ。）」

 

あー、そうか。なるほど。その一言はしっくり来る。

彼女は確かに若い。手練れに思ったが、実際は未経験と思われた。

私が彼女の幼い心のトリガーを引いたのだ。

 

[５２６のテーブル上イメージ]

 

ーー「Range, my advice is that… “Just enjoy your life”. （レンジ、私のアドバイスは…… ”人生楽しんで”かな。）」

 

うーむ。そうだよな。

それは正しい。

 

「Range, I think if you don’t love her, you may meet new someone. （レンジ、もしあなたがサンを愛していないなら、新しい誰かと出会うと思うわ。）」

「Ummm… I really love her. But our time isn’t enought. (うーん……　本当に愛してます。でも、共有した時間は十分ではありません。）」

「Yeah… Only three weeks? Right? You need the time each other, more more. （ええ……　たった三週間？　でしょ？　お互いに時間が必要だわ、もっともっと。）」

「Yes. I agree with you. (はい。そう思います。）」

 

本来なら時間を掛けてアプローチするところが、今回はなぜかトントン拍子に進んだ。

世間知らずの彼女を、私が本気を出してブス奥義まで繰り出した結果、餌食となったのである。

 

「She’s young. No experience. But you’re not. （彼女は若い。経験もない。でもあなたは違うでしょ。）」

「Yeah… （ええ……。）」

「You can understand her someday. Range, slowly. （いつか彼女を理解できるわ。レンジ、ゆっくりよ。）」

「Yeah… （ええ……。）」

「”Just wait”. Okay? (”ただ待つこと”。わかった？）」

 

ーー彼女のアドバイスは真摯なものだった。

いつもならレディースドリンク攻撃を喰らうのだが、このときは私の話をしっかりと聞いてくれた。そして、その回答はフィリピーナ本来のものだっただろう。

 

それにしても、この後はどうするかな。

 

……もう二人ほど女性がローテーションした頃、ワンセットが終了。

延長するかチェックするかの時。

 

サンからメッセージが入ってきた。たった一言。

 

「Home. （家よ。）」

 

はっ？　何処の？

 

くそっ、この『フィリピーナはいつも一言足りない』が多すぎる。

『本当に愛してるなら居場所くらい分かるでしょ』と言わんばかりのメッセージ。

いやいや、『my』か『your』かくらい付けてくれ。『自宅』っつっても、どっちのよ！？

 

 

ーー私はそこでチェックして、一度、マラテの自宅へ戻った。

彼女に鍵は渡していないので、中には入られないはず。

居るとしたら、コンドミニアムのエントランスか、自宅玄関前だ。

 

ーーしかし、彼女の姿はなかった。

くそっ。

 

私はこの夜、サンのことは放っておこうかと考えた。

彼女のこともそうだが、マリーやザリのお店へ、あるいは別のお店へ行った方が、私が得るものは大きい。サンはしばらく時間を置いて……。

 

ーー悩んだ末、コンドミニアム前でタクシーを拾った。

行き先はマカティ。彼女の自宅コンドミニアムへ。

 

私はどうしても彼女のことが心配だったのだ。……これも彼女の術中なのかもしれない。

それでもあのようなメッセージを受けてなお、これから夜遊び、さらに寝付くことは難しい。

私は気付いた。

サンに心が傾き始めたのだ。

 

[マカティ中心部の街並み]

 

ーーサンの住むコンドミニアムの場所は記憶していた。

その前に到着したところで、彼女に電話を掛けた。すると、見計らっていたかのようにすぐに出た。

 

「Sun! I’m here. Your home! （サン！　来たよ、君の家！）」

「Hi, Range! Kyahahaha! （ハイ、レンジ！　きゃはははっ！）」

 

ばっ、爆笑している。

この女、「死にたい」なんて強烈なメッセージ送ってきて、さらにマカティに戻ってこさせてなお、笑うか。

 

「Sun! Can I see you now? I wanna see you! （サン！　今会える？　会いたい！）」

「Me too! But I’m tired and sleepy. Kyahahaha! （私も！　でも、疲れたし眠い。きゃはははっ！）」

 

……一生、寝てろ。

 

私は「せっかく会いに来たんだ。少しだけ話そう」と伝えた。

彼女は「じゃあ、ちょっと準備するから待ってて」と。

 

ふぅ、良かった。

何とか話が出来そうだ。まぁ、彼女の感じからするとしばらく放置していれば忘れてくれそうな気はするが。

 

んー。

せっかくここまで来たのだから、ブルゴスにでも行って、ゴーゴーバー巡りでもしてみたい気もするが……。

 

 

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