[前回のあらすじ]
フィリピーナ彼女とその母親が初来日。二日目の朝、USJに電車で向かおうとする。しかし、乗り換えの駅では電車が信号トラブルでストップ。朝からトラブルの予感。
[前回記事]
【レンジブログ146】フィリピン彼女とUSJへ向かうも辿り着けず!?
[序章第一話]
【レンジブログ1】日本人経営者と私、フィリピンでの入国審査へ
[第一章第一話]
【レンジブログ33】プライベートフィリピン女性との深夜デート。マラテのディスコ EXKLUSIVE へ
[第二章第一話]
【レンジブログ51】マニラのフィリピーナが初めて日本の地方都市に来る
[第三章第一話]
【レンジブログ71】マニラでビジネス開始。フィリピーナのコンサルティングで法人設立。
レンジブログは第三章で完結しています。
それ以降のエピソードが「オノケンブログ」の内容になります。
[オノケンブログ第一話]
オノケンブログ第一話「転落と後悔」
また、レンジ個人のその後のエピソードは「外伝」という形で記述しています。今まで二つの外伝がそれぞれ完結しています。
[外伝一章第一話]
【レンジブログ101】フィリピーナをフィリピン国内旅行に誘ってみた
[外伝二章第一話]
【レンジブログ121】フィリピンから帰国、その日にフィリピンパブへ
【レンジブログ147】フィリピン彼女とユニバーサルスタジオジャパンへ
ーーUSJにようやく到着した。
私達はエントランスゲートからかなり離れた駐車場に車を留めた。
そこから10分ほど歩くとエントランスゲートが見えてきた。
マルコ達は嬉しそうに記念写真を取り始めた。
周りのお客さんも同様に、入場前からすでにUSJを楽しんでいるようである。
私もその記念写真撮影に付き合う。
続いて有名なオブジェの前へ。
ここでも記念写真。
様々な角度、位置からシャッターを切り合っている。
一体何ショット撮るのだろう。まだ入場もしてないのに、このペースで進んで行けばスマホの容量も今日一日で使い切るのではないだろうか。
二人とも少女に戻ったようだった。
いくらなんでも撮り過ぎだろうと思うが、これだけ喜んでくれるのなら、やはり連れてきて良かったか。
チケット売り場の前には多くの人。
「私が買っておくから、トイレに行っておいで」と伝え、私だけ列に並んだ。
そして、ようやく園内へ。
時刻はちょうど正午を過ぎた頃だった。
まだお客さんの密度は少ないが、これからどんどん増えるだろう。
少なくともあの西九条駅で見た群衆は皆こちらへ向かっているはずだ。
ーー二人は相変わらず要所要所で写真を撮っている。
私も時々そのワンショットに付き合うが、早くもうんざりしてくる。
これが夜まで続くはずだ。ゾッとする。
とりあえず今のところ、彼女たちに乗りたいと言うアトラクションは無いようだ。
私達は写真を撮りながら、園内を反時計回りに歩いて行った。
そして、特に人が多かったのは、『ハリーポッター』のエリア。
歩くスペースも無い程に、人で溢れていた。
私たちはわずかな隙間を縫いながら、奥の城を目指す。
城のアトラクションエリアもものすごい人の数だった。
「Here is Philippines!?(ここはフィリピンなの!?)」
フィリピンのモールやマーケットを思い出す。
ほとんど身動きが取れず、周囲の流れに乗ることしかできなかった。
ーーあまりの混雑振りに、近くの係員に声を掛ける。
すると、「中の見学だけであれば別の入口からどうぞ」と言われ、それを二人に提案すると「そうしましょう」と言う。
少し端のゲートは空いており、そこから城の中に入る事ができた。
この『ハリーポッター城の見学』が、USJでの初アトラクションと言えようか。
マニラのテーマパークに比べれば、それは精巧に造られた代物。二人は興味深そうに観察していた。
そして、外へ出る。
テンションの高かった二人も流石に疲れが見え始めていた。
私はもう帰りたかった。
ーーハリーポッターエリアを後にしたところ。
マルコは空腹のためか、少し不機嫌に。
ここで一旦、レストランでランチ休憩を取ることにした。
私たちは『ジョーズ』のアトラクションに隣接したレストランへ。
昼過ぎの時間帯、店内はそれほど混雑はしていなかった。
ここではチキンバーガー、フライドチキン、ポテトセットなどをそれぞれオーダーした。
ようやく座れたこと、落ち着いて食事が取れることにホッとしていた。
しかし、一人何故か不機嫌が続いている人が隣にいた。
マルコ。
彼女自身が頼んだチキンバーガーのチキンが『ナゲットフライ』であったためだった。
彼女は「I’m not kids..(私はガキじゃねぇ……)」と小さい声でキレていた。
続いて、「これがチキンだと? ジャパン、舐めてんのか」と。
……わかる。気持ちはわかる。
フィリピンではこの1/10の値段で、10倍は旨いチキンを死ぬほど食べられる。
マルコは「この世で最もチキンを愛している」と自負するほどのチキン好きである。
彼女の怒りは日本人の私でもわかる。
しかし、これが観光地と言う場所での食事なのだ。それを今回で知ってほしい。
私は彼女に、私がオーダーした『フライドチキンコンボ』を譲った。
二つあったチキンのうち一つを残しておいてよかった。
こちらはフィリピンで食べるフライドチキンと似たようなものだった。
それを食べさせると彼女の機嫌はようやく回復した。
ーーレストランを出て、次に見えてきたのは『ウォーターワールド』のアトラクション。
私たちはそこへ入り、観客席の後ろの方に座った。
ここでは水辺でのアクションショーを観ることができる。
ショーを見ながら、マルコが「この世界観、フィリピンみたいね!」と言う。
おっ、おう。
自虐ネタなのだろうか。笑っていいのか分からないので、苦笑いで返事をした。
ショーが終わり、再びUSJを巡る。
ーーその時、マルコが急に走り出した。
「こっち、こっち!」と私を呼んでいる。
何かを見つけたようだった。
その先にあったのは……
ジュラシックパークのフライングダイナソー。
まず断っておきたい。
私は『ダメ』なのである。
絶叫系アトラクションが絶望的にダメなのである。
例えば、コーヒーカップやメリーゴーランドですら、怖いと感じてしまうほど。
(始めは大丈夫なのだが、スピードが上がってくると血の気が引いていく)
特に、下半身がフワッとする『チン寒系』。飛行機は大丈夫なのだが、アトラクションはダメなのだ。
子供の頃、とあるテーマパークで『バイキング』と言うただのチン寒専門アトラクションに乗ったことがある。
私はその時「なぜこのような拷問を受けなければならないのだろう、助けて」と実母の顔を思い出し、乗ったことに絶望した。
それ以来、私は全くダメなのである。
つまり、ジェットコースターなど到底無理。
一度だけ挑戦した事があるが、その時は祖母の顔まで思い出した。
ーー躊躇している私の腕を、無慈悲に引っ張る彼女。
私は食い下がったが、一蹴される。
「I can’t hear you anymore. (これ以上、お前の戯言は聞けない。)」
と、強引に順番待ちの列へ。
母親は「私は下で待ってるから」と、休憩スペースのベンチへ。
……公園で遊ぶ子どもがアリを踏み潰すほどに、邪気は無いのだろう。
分かっている。
日本、USJにまで招待しておいて、ジェットコースターにも乗らない彼氏などあり得ない。
よっし。
この際、乗っていた飛行機が落ちたと思おう。運が良ければ私は生き残っているはず。
ーー順番を待つ間、先のお客さん達の叫びが聞こえてくる。
マシーンに引き回され一体何が楽しいのだろうか。
私には恐ろしさしかない。列が進むごとにそれはゆっくりと増幅されていく。
叶うなら逃げ出したい。
私の断末魔の叫びは近い。
ーーこのフライングダイナソーについて。
マルコから「世界最長のコースで最大の高低差」だと知らされる。
USJの目玉らしい。
それ、今言うか。どうせなら乗った後に知りたかった。
……無理である。
本来は絶対に無理である。
お金を積まれても無理である。
しかし、「やっぱり嫌だ」と言う勇気は出てこなかった。
ーー気付けば私たちの番に。
足が宙ぶらりんの席に座り、セーフティバーをロックされる。
おいおいおい、大丈夫だろうなぁ……
このバーの隙間の『遊び』が怖いのに。
不安しかない私は、無駄にグイグイと引っ張り確認する。
最後の悪あがきだった。
もうマルコの事など頭にない。
自分のことしかない。
自身の存命しか考えられない。
マルコは死んでも、俺は生き残れ。
そして、ファーストフォールに向かう。
本当に翼竜に捕らえられたと思うしかない。
薄目で下を見てしまった。
死んだのだ。私は死んだ。
死んだら怖さなど無いはずだ。
しかし、感じたことのないこの恐怖。
「So excited!! Wow Fuu! (超テンション上がる!! ワオ フー!)」
横のフィリピン人が何か叫んでいる。
私にはもう何を言っているのかわからない。
助走を登り終え、一瞬の静寂。
直後、重力が狂い、体が宙に浮く。
うおおぉぉお!!
皆さん。
人間、本当の恐怖を感じた時、どうなるかご存知だろうか。
『半笑い』になるのである。
この時の私がまさにそれ。
ファーストフォールからは、ひたすら薄ら笑い。
そしてしばらくマシーンに振り回され続けた。
ーーフライングダイナソー終了。
マシーンを降りた私は足元がおぼつかない。
体からは汗、ヨダレ、涙、その他理性では制御できない液体が全て出ていた。
ーーその後、ミニオンズパークへ行くまでの記憶がない。
マルコにミニオンズの被り物を被せられて我に戻った。
私は生きている。
……生きてるって素晴らしい。
生を思い出した私は次第に元気が出てきた。
その場で同じ被り物をマルコにも買い、二人で被る。
ははっ、 はははっ!
ダセぇっ!
ジェートコースターを終えた私は可笑しなテンションになっていた。
カフェインを過剰摂取したような感じだ。もう怖いものは無い。
ーー歩いているとまた人気アトラクションが目に入ってきた。
同じく絶叫系が苦手な母親を、「これは大丈夫だから」とマルコと二人で誘う。
私もやはりダメなのだが、この時はイケイケになっていた。
説得して三人で中に入る。
ーーしかし、母親は本当にダメだったようだ。
アトラクションを終えて、外へ出てきた時、母親は鬼の表情に変わっていた。
最後のフォールで命の危険を感じたのか、今まで見たことの無いモゲた表情。
それを見たマルコはゲラゲラ笑っていた。
直後、母親がタガログ語で何かをマルコに伝える。
それを聞いたマルコは瞬間的に血の気が引き、死んだ表情に変わった。
見たことのない顔だった。
おそらく親子間で『ザキ』に近い文言が伝えられたのだろう。
この時私は彼女らの真の親子関係を知った。
ーーしばらく無言のまま周辺を歩く。
西洋のような雰囲気のエリアにて。
母親も見覚えのある風景だったのか笑顔を見せるようになった。
よかった。少し機嫌が治ったようだ。
ーー途中、中に人間が入ったキャラクターがおり、周りに人が集まっていた。
「ほら、マルコも撮ってもらって!」
私は彼女を誘導し、キャラクターの横へ導く。
一緒に写真を撮ったことで、すっかりマルコはミニオンのファンになったようだ。
その後はいくつかアトラクションに乗った後、陽は傾いて行った。
そして、イーブニングタイム。
肌に感じる北風にはもう全く暖かさはなかった。
この時期、ナイトパレードはクリスマス用の特別バージョンだったようで、以前見たものよりかなり豪華な演出だった。
それを見た二人は大変感動しているようだった。
ーーそろそろ帰ろうかとなり、お土産ショップのエリアへ。
付近のショップを巡り、お土産を探す。
マルコは「ここのチョコレートは高過ぎるわ」と、珍しく優しいことを言ってくれる。
てっきり豪快な買い物が始まるだろうと覚悟していたので、ホッとした。
その後、しばらく店内を散策する。
私も他のフィリピーナへのお土産を買おうかな……
その時、マルコが誰に渡すのかわからないキーホルダーをジャラジャラと持ってきた。
何個持ってきたのだ?
1、2、3…
10個を超えた。
これらは親戚一人ひとりに配るらしい。
値札を見ると、一個1,500円。
泣けてくる。
案の定これでは終わらず、追加でミニオンの貯金箱を二つ。
一つは自分用、もう一つは弟のためだと言う。
お土産の計、二万円超。
チケット等合わせた当初の予算は遥かにオーバーしていた。
ーー午後8時を過ぎた頃、USJを後にした。
帰りの車内で二人が「お腹空いた」と言う。
確かにどこかで夕食を済ませてからホテルに戻りたい。
マルコがスマホを確認したのち、私にリクエストしてきた。
これから次の場所に行きたいという。
その場所は『道頓堀』。
絶叫嫌いの私には痛いほど同感できる記事でした
過去、フィリピーナとユニバに行ったことがあり、懐かしいなと思いながら読ませて頂きました。
過去の思い出です。その時は幸せを感じました。そして、その子が今の嫁さんですw
当時は可愛かったのですが。とほほ
うーん…これはこれで面白いけど。オノケンレンジのマニラ夜遊びが好きかな。
レンジさん執筆中申し訳ないけど汗
毎日楽しく拝見してます。
画像で吹きました笑 レンジさんお疲れ様です。
毎日レンジブログ読める幸せ
三章も期待通り面白いです!
フィリピンに行ったことない友人を誘ってますが、とりあえずクレマニ読めって勧めてます?