西九条駅、USJへの電車

 

[前回のあらすじ]

フィリピーナ彼女とその母親が初来日。ホテルにチェックインして、夕食へ。大阪弁天町付近の居酒屋にて日本で初めての食事を取る。そして、ホテルに戻り就寝。

[前回記事]
【レンジブログ145】日本の夜をフィリピーナ彼女と初めて過ごす

 

クレイジーマニラの記事は、実際の旅行や取材を元に記述しています。小説風のストーリ仕立てで記述していますので、過去の記事を参照頂けると話の内容が理解しやすいかと思います。また、登場人物の名前等は仮名を用いているところがあります。

 

[序章第一話]
【レンジブログ1】日本人経営者と私、フィリピンでの入国審査へ

[第一章第一話]
【レンジブログ33】プライベートフィリピン女性との深夜デート。マラテのディスコ EXKLUSIVE へ

[第二章第一話]
【レンジブログ51】マニラのフィリピーナが初めて日本の地方都市に来る

[第三章第一話]
【レンジブログ71】マニラでビジネス開始。フィリピーナのコンサルティングで法人設立。

 

レンジブログは第三章で完結しています。

それ以降のエピソードが「オノケンブログ」の内容になります。

[オノケンブログ第一話]
オノケンブログ第一話「転落と後悔」

 

また、レンジ個人のその後のエピソードは「外伝」という形で記述しています。今まで二つの外伝がそれぞれ完結しています。

[外伝一章第一話]
【レンジブログ101】フィリピーナをフィリピン国内旅行に誘ってみた

[外伝二章第一話]
【レンジブログ121】フィリピンから帰国、その日にフィリピンパブへ

 

 

【レンジブログ146】フィリピン彼女とUSJへ向かうも辿り着けず!?

 

ーー隣のベッドで眠っている彼女。そのスマホのアラームで目覚めた。

 

時刻は午前7時。

皆で「Good morning. 」と言葉を交わす。

 

私は二人に、

「Did you sleep well? (眠れた?)」

と聞いた。

 

母親は「もう楽しみ過ぎて眠れないかと思ったら、爆睡よ!」と、わけのわからないことを言っていた。

マルコは「部屋が暑くて。もっと空調を抑えて欲しかった。……あまり眠れなかったけど、大丈夫よ」とのこと。

また、私の猟奇的なイビキもこの日はそこまで酷くなかったらしい。

 

大阪ベイタワーホテル トリプルルーム

 

皆、寝起きこそ眠気が残っていたが、すぐに目が冴えてきたようで外出の準備に取り掛かる。

女性陣はまず浴室に入り、シャワーを浴びるようだ。その後は髪を乾かしたり、お化粧したりなど身支度には少し時間が掛るだろう。

 

ーーその間、私は周辺のジョギングへ出掛けることにした。

実は私、ジョギングと言う名の散歩が好きなのである(平均時速6km、ほぼ早歩き。本人は走っているつもり)。

初めて訪れる都市や場所だと、朝のうちにその周辺を散策するのが一つの趣味なのだ。グーグルアースを見るだけでは満足できないのである。

この時も、宿泊している『弁天町駅付近』がどのようになっているのか、この目で見ながら確かめたい。

 

私は、軽く顔を洗って、トレーニングパンツとパーカーに着替える。

二人に「小一時間ほど外へジョギングに行ってくるから!」と伝え、ランニングシューズを履いてホテルの外に出た。

 

ーー冬の朝。外を歩き始めると吐息は白かった。

弁天町駅には通勤を急ぐ人々の姿があった。

私はその横を軽快に通り過ぎ、大通りを東へ。渋滞が始まっている車線に面した広い歩道の上、九条駅方面へ走りだした。

 

私は200mほど走っては、一度歩き、200mほど呼吸を整えた後、再び走るを繰り返していた。時速4km~6kmと言うアップダウン走行である。

これで足腰は鍛えられ、一日の消費カロリーは高まり、私は周囲が心配するほど痩せていくだろう。がはははっ。

 

ーー気温は低いが、次第に体は温まり、すがすがしい気持ちだった。

 

そして、九条駅の辺りで折り返そうかなと思っていたところ、あるエリアが気になった。

 

松島料理組合

 

『松島料理組合』

 

旅館エリアだろうか。

湾岸部の住宅街の中に、このような趣のあるエリアがあるとは知らなかった。

 

私は、その一体の古風な雰囲気が気になり中へ入って行った。

 

松島新地 松島料理組合

 

おぉー。なんだか日本情緒を感じさせる街並みである。

今は朝で静かな雰囲気だが、午後からは賑わいを見せるのだろう。

この辺りもマルコ達を案内すれば、きっと喜ぶだろう。

日本の都市部に残る伝統的な風景を見れば、「Wow Japan Japan!」とはしゃいでくれるはずだ。

 

松島新地 松島料理組合

 

この辺りは、夜の街としても活気があるのだろう。

看板の多くが『女性の名前』だ。おそらくスナックだろうか。

それにしてもやけに『18歳未満お断り』の看板が立ってある。

まぁ、マルコも母親も大人の女性だ。もし繁華街のような雰囲気だったとしても、それはそれで楽しんでくれるだろう。

よっし、ホテルから近いし、この旅でもし時間があればこのエリアも案内してみよう。

 

私は、良いところを見つけたぞと気分良く再び走り始めた。

 

と、その時。

衝撃的な立て看板を見つけた。

 

松島新地 松島料理組合 看板

 

『通行人の多いこの場所での小便行為による局部露出は公然わいせつ罪が成立する 現行犯で逮捕する』

 

めちゃくちゃである。

このような立て看板を置く程とは…… ここの家主は相当に立ち小便を浴びたのだろう。可愛そうに。

 

……そうだった。

日本はある意味、フィリピンよりクレイジーな国なのである。

同じ日本人として申し訳ないが、日本の都市部はマニラより余程クレイジーな時がある。

 

それにしても、この付近は治安が悪いのだろうか。

 

ちょっと待てよ…… まつしま、松島?

あっ、もしかして『松島新地?』

 

ここかっ! 有名な日本の夜遊びエリアではないかっ。

 

私は『飛田新地』についての知識はあったが、その他のエリアにはあまり詳しくなかった。

ただ『松島新地』の名前は知っていた。まさか、今回宿泊した場所から程近いとは。

 

そうか……。まぁ、でも二人を案内してもそれはそれで社会勉強になるかも。

 

直接的な表現を避けるとすれば、『Japanese Local KTV』と言えば伝わるだろうか。

いや、カラオケは無いから『Japanese Go Go Bar』か?

いや違う、女の子と外には行かないから『Japanese Come Come Bar』か?

それとも「BunBun Sokusoku aru Omise」と言えば良いか。いや、Sokusokuと言う単語を使うと、下手をすれば私が普段利用していると疑われる。

 

よし、『Come Come Bar』もしくは『Japanese Adult Entertainment』と言えば伝わるだろう。

 

……カムカムバーか、ちょっと待て。

『カム』は発音次第でとんでもなくスケベな表現になってしまう。

汁まみれ、あるいは汁男優が満載の店舗だと思われるかもしれない。

 

……普通に「Almost Go Go bar, but no take out only inside. Very short service.」と言えば良いか。

詳しく質問されたらその時に説明しよう。

 

私はその場で謎の説明を考えながら、頭を捻った。

 

そして、そこでUターンして、ホテルへ戻った。

 

ーー部屋に戻ると彼女たちの準備はまだ終わっていなかった。

 

特にマルコ。

少し不機嫌な様子。

昨夜、二つのヘアアイロンを使った際、ブレーカーのヒューズが飛んだのだが、その影響か内一つのヘアアイロンが故障したようである。

故障したと言うのは、マルコお気に入りのもの。10A250V仕様のフィリピン用だった。

250Vだと日本の100V電源では電圧が足らないだろう。まず温まらないし。

もしかしたら古いモデルのため一瞬電気が通ってかつ故障したのかもしれない。

 

フィリピン ヘアアイロン ホテル

 

私は内線でフロントに「貸し出し用のものがあるか?」と聞いた。すると、「ストレート用のものならあります」と。

そして、スタッフはすぐに部屋に持ってきてくれた。

マルコはそれを受け取ると、機嫌が治り、踊り出した。

 

「Japanese hotel is very kind! (日本のホテルはとても親切ね!)」

昨日は「ダメね」と言っていたのに。

 

彼女がヘアアイロンを使っている間、私もシャワーを浴びて、着替える。

 

浴室から出てきた時には、「時間がもったいないわ、早くして!」と言わんばかりのプレッシャーを受けた。

私は急いで身支度を済ませた。

 

しかし結局、マルコの準備はもう少しかかり、彼女の支度完了合図を受けて部屋を出た。

 

ーー私はUSJへ到着する時刻が気になっていた。

 

「We’ll arrive USJ almost 11am. (USJにはほとんど11時着です)」

 

しかし、マルコは全く気にしていなかった。

「Ha!? It’s 9am now in Maynila. Ha!? (はっ!? マニラはまだ9時でしょ。何言ってんの?)」

 

おっ、おう。

今、日本とフィリピンの時差について議論する必要があるのか。

マルコは「これでも十分早いのに。日本人は急ぎ過ぎよ」と冷めた表情だった。普段は「遅いっ!」と怒っているのに。

 

ーーこれからUSJへ向かう。

私が「車か電車のどちらで行きたいか」と聞くと、二人は「もちろん電車!」と言う。

日本の公共交通機関を利用してみたいようだ。

 

ユニバーサルスタジオジャパンへの電車 弁天町から西九条駅、ユニバーサルシティ

 

弁天町駅からだと『ユニバーサルシティ』へ向かうには、一度『西九条駅』に向かいそこで乗り換える。

経由駅は二駅だけなので、車で行く時間とさほど変わらないだろう。

 

私達は電車に乗り、まずは西九条駅へ向かった。

 

ーー西九条駅のホームにて。

 

西九条駅、USJへの電車

USJへ向かおうとするたくさんの乗客で混雑していた。

ユニバーサルシティ駅への電車はすでにホームに停車しており、皆その扉が開くのを待っていた。

 

マルコと母親はすでにその電車のデザインに興味深々。それをバックに二人で写真を撮り合っていた。

また、近くには中国人団体客があった。マルコは彼らの話す会話を横で聞きながら「シェイシェイ! ハイハイ!」とふざけて真似ていた。

私は「止めなさい!」と彼女を制す。かなりテンションは高いようだ。

よっし、これに乗ればUSJだ。

 




 

ーーしかし、しばらくしても電車の扉が開かない。

 

……どうしたのだろうか。

 

反対のホームからは次々と乗客が降りてくる。

一時的にホームはフィリピンの混雑したモールようになっていた。

 

そのとき、駅内アナウンスが流れた。

「大変ご迷惑をおかけしております。信号トラブルにより、ゆめ咲線ユニバーサルシティ方面への電車がストップしております。今のところ終日ご利用いただけません。ユニバーサルスタジオジャパンへはその他の交通手段をご利用ください。繰り返します……」

 

……は?

は?

 

一瞬、理解が出来なかった。

日本人の私でも理解が難しいのだから、ここにいる多くの外国人達はもっと理解できないだろう。

一応、英語でのアナウンスも行われていたが、完全なカタカナ発音。マルコと母親の耳でも理解できていない。

ホームは人々で溢れ騒然となった。

 

私は「電車が止まってるみたい。このままホームに居てもしょうがない。一旦外に出て、タクシーで行こう!」と二人に伝えた。

人混みの中を進みながらホームを離れ、西九条駅を出た。

 

ーーいや、正確には『出ようとした』。

改札を抜けて外に出た瞬間。

USJへは無理だと悟った。

 

駅のすぐ外にはタクシーやバスを待つ人々の群れ。

 

皆ここからUSJを目指すのだろう、尋常ではない人の数。

大きな神社の初詣レベルだった。

しかも、飛び交う言語のほとんどは日本語ではない。

 

私は「ここは日本か?」と思った。しかも連れ添っているのはマルコと母親、まるでフィリピンに居るような錯覚に陥った。

 

これではタクシーすら乗ることができない。

 

しょうがない。

一度、弁天町駅に戻り、車で行くしかない。

 

私は二人に現状を説明し、「一旦ホテルへ戻って私の車で行こう」と提案した。

 

ーー三人分の切符を買い直し、人混みを掻き分けながら再び環状線のホームへ。

弁天町駅へ戻る。

そのとき、マルコが発した言葉は、

 

「日本の電車、ダメね」

 

くっ。

何も言い返せない。違う、違うんだ。

日本の技術力、組織化された社会インフラは世界トップクラス。世界に誇れるクオリティでフィリピンより凄いのだ。これはたまたまなのだ。

それをマルコに知ってほしいのだが、今のところ彼女を納得させるような状況ではない。

むしろ「日本は劣っている」ような印象を与えてしまっている。

……悔しい。

 

ーーホテルに戻って来た私達は、地下の駐車場へ。

私の車に乗り込み、今度こそUSJへ向かう。

 

西九条駅の混雑など知らなければ、すぐに到着したことだろう。

 

結局、車ではホテルから10分と掛らなかった。

 

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レンジ
オノケンと同じ会社の先輩であったレンジ。数年前からマニラを訪れるようになり、やがて現地法人を持つまでに。趣味は海外サッカーTV観戦。 実体験に基づいたフィリピンにおけるマニラの闇、貧困と格差、現地ビジネスなどオノケンとは違う視点の記事をアップしていきたいと思います。

6 コメント

  1. 世界の人に「日本はこんなに凄いんだぞ」って思われたいですよね。これから訪日客も増えますし。
    フィリピン人彼女さん、日本を気に入ってくれると良いですね!

  2. 大阪に住んでいます。
    普段は近所のピンパブで遊んでまして、毎日こちらを拝見しています。
    クレイジーマニラの話の舞台が日本だとなんだか新鮮です。しかも地元なのでとても嬉しいです。
    更新頑張ってください。

  3. なんだかんだで毎日アップされている
    そして見に来てしまっている私
    これクレマニ中毒?
    あとカムカムバーに笑ってしまった

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