[前回のあらすじ]
フィリピーナ彼女とその母親が来日して3日目。一泊二日の予定で有馬温泉へ向かう。夕食時立て続けの「肉料理」に、フィリピーナ彼女が機嫌を悪くする。
[前回記事]
【レンジブログ149】フィリピン彼女が激怒!? 有馬温泉にて
[序章第一話]
【レンジブログ1】日本人経営者と私、フィリピンでの入国審査へ
[第一章第一話]
【レンジブログ33】プライベートフィリピン女性との深夜デート。マラテのディスコ EXKLUSIVE へ
[第二章第一話]
【レンジブログ51】マニラのフィリピーナが初めて日本の地方都市に来る
[第三章第一話]
【レンジブログ71】マニラでビジネス開始。フィリピーナのコンサルティングで法人設立。
レンジブログは第三章で完結しています。
それ以降のエピソードが「オノケンブログ」の内容になります。
[オノケンブログ第一話]
オノケンブログ第一話「転落と後悔」
また、レンジ個人のその後のエピソードは「外伝」という形で記述しています。今まで二つの外伝がそれぞれ完結しています。
[外伝一章第一話]
【レンジブログ101】フィリピーナをフィリピン国内旅行に誘ってみた
[外伝二章第一話]
【レンジブログ121】フィリピンから帰国、その日にフィリピンパブへ
【レンジブログ150】フィリピン彼女が荒れまくる!? 有馬温泉
一方、母親は料理に舌鼓を打っていた。しかも「マルコ、日本の料理を食べなさい」と軽く説教してくれる。
母親、ありがとう。
そしてついでに言って欲しい。
「あなただけフィリピンに帰りなさい」と。
料理は女性一人では食べ切れないほどの量だったが、それでも美味しそうに食べる姿は見ているこちらも嬉しい。
あー、母親よ。あなたを一緒に招待して本当に良かった。
もしマルコと二人っきりだったなら、私は今頃ストレスで死んでいる。私は悔しさと怒りと切なさで「もう解散! さらば! 勝手に帰れぇえいっ!」と言い放っていただろう。
ーーこのとき、母親と『メイドを雇う事』についてどう考えているか語り合った。
それは、母親自身が若い時に海外で『メイド』として働いた経験があったからだ。
フィリピン人メイドは『英語を話すことができる』ため、子どもの英語教育にも良いと言うことで別の東南アジアの国の富裕層から人気だそうだ。
また、子どもを持つことの考え方についても語り合った。
母親は「メイドに任せっきりなんてダメよ」と。私は「いえいえ、メイドを雇うつもりはありません。私が家事と育児をします」と返答した。
続いて結婚と結婚後の話になり、欲しい子どもの数も聞かれた。
私は「いやー、ちょっとまだその予定は……。ねぇ?」と横に話題を振る。
マルコは無言だった。
ーー彼女は暇そうに手元の小鉢をつついていた。
そして、私と母親の会話を聞いていたかと思うと、不機嫌そうに箸を置く。
「I’m full. (もうお腹いっぱい。)」
彼女は他の料理には手を付けなかった。
そして、「レンジ、私の分も食べたら?」と言う。
しかし、私も一人分を食べ切るだけで正直お腹いっぱいになってしまった。
頑張って箸を付けるものの、多くを残してしまうことに。
ーー食事を片付けに仲居さんが部屋に入ってきた。
「お食事はいかがでしたか?」
「はい。とても美味しかったです」
「……少し多かったですかね」
「あー。実は今日、お昼が遅くて。しかもお肉だったんですよ。ははっ、女性には多かったかもですね」
「……そうなんですね」
仲居さんの悲しみが苦笑いでも十分伝わってきた。申し訳なかった。
言えない。
到底、「フィリピン人特有の『外食を食べ残す文化』がここでも発動されています」とは言えない。
私のチョイスミスが原因なのだ。
それでも仲居さんは気さくに話しかけてくれた。
「ご主人は日本の方ですよね……」
「あぁっあ? そうです。こちらはフィリピンから初めての日本です」
「ご家族で良いですね!」
「そうですね。たまにはゆっくりと」
相手から見ればそうだろう。違和感を与えないよう無難に返答した。
私が今『ゆっくり』とは対極にいる事は黙っておこう。
「お言葉は……」
「あー、ほとんど英語です。簡単な」
「そうなんですねー! 素敵ですねー!」
鼻が高くなった私は、「今、仲居さんに英語を褒められたよ」とマルコに伝える。
しかし、「あなたの英語は聞き取りにくい時がある。調子に乗るな」と言われヘコむ。
むうぅ。……御意。
その後も仲居さんは食事を片付けながらいろいろと世間話を振ってくれた。
仲居さん、ありがとう。その明るい笑顔と言葉で場が和んだ。
ーー午後8時半。
食事が終わり、リラックスタイムに入った。
マルコと母親は寝室に入り、寝支度をしているようだ。
私はテレビを付ける。
BSで『クジラの特集』をしていた。
私は幼いころからクジラに浪漫を感じている。それは今も変わらず。じっとそれを見始めた。
その時、母親が私を呼んだ。
なんだろうと思い、母親の元へ向かう。
母親は茶色い封筒から何かを出していた。
手元には帯で巻かれた1,000ペソ札の束。
100,000ペソだった。
「Range, thank you so much. Please accept this. I know this is not enough. But.. Thanks for everything.(レンジ、本当にありがとう。これを受け取って。十分じゃないことはわかってる。でも…… ほんの気持ちです。)」
おっ、おっ、おおぉ、
お母ぁさぁあん!!!
目頭から汁が滲み出てきた。
今まで彼女たちを心の中で何処か疑っていた。いや、疑いに疑っていた。
正直に言えば、『日本人ゲット、イージー、ラッキー』くらいに思われているだろうと。
信じたい気持ちよりも疑いの方が強かったのだ。
間違いだった。
それが猛烈に恥ずかしかった。同時に安堵したため、感情が溢れた。
私は彼女たちが決して裕福ではないことを知っている。
その金額を用意するのは大変なはずだ。おそらく、マルコが稼いだお金も含まれている。
「Mom, I can’t recieve. Please keep.(お母さん、受け取れません。しまってください。)」
「No. You must take. (ダメよ、受け取って。)」
「Mom, I don’t need money. But instead, please cook for me again next time. (お母さん、お金ではないんです。その代わり、また今度手料理を食べたいです。)」
「Okay! (わかったわ!)」
母親はすぐに100,000ペソをしまった。
笑顔で封筒をバッグに戻す。
早っ! しまうの早っ!!
ぐぬぬぬっ…… 何なんだこのくだりは。
100,000ペソ、約22万円。
受け取れるものなら受け取りたい。
しかし、受け取れない。受け取れる訳がない。これで良いんだ。
マルコは今、トイレに入っている。きっとこのやりとりは聞かれたか、後に母親から聞くだろう。
『やっぱりレンジは最高の男よ』
こう言われたい。
そして、マルコの態度を改めさせたい。彼女が尻尾を振り、ケツを差し出してきたら、思いっきり調教してやるのだ。
これは投資だ。
私達の未来の関係に対して、今は必要ないお金。正解のはず。
きっとこれが将来実を結ぶことになるだろう。
ーーマルコがトイレから出てきた。
「Range?(レンジ?)」
「What?(何?)」
「Why are you crying? (何で泣いてるの?)」
彼女の神妙な面持ち、ここまでの表情は初めて見た気がした。
私はさっと汁を拭き、ブスな笑顔で「泣いてないよ」と返事をした。
「Anyway, Range. I need hair iron.(そんなことよりレンジ。ヘアーアイロンが要る。)」
「Anyway!? Hair iron!? (そんなことより!? へアーアイロン!?」
始めは彼女が何を言い出したのか理解できなかった。
私はお花畑にでも行っていたらしい。一瞬にして現実に引き摺り戻された。
彼女は「寝る前に髪をセットしてから寝たい」と言う。
おっ、おう。
とりあえず、フロントに電話を掛けると「他のお客様の忘れ物で良ければ……」と有り難い返答が。
良かった。
マルコにそれを伝えると、彼女は笑顔になった。
ーー先ほどの仲居さんがすぐにヘアーアイロンを届けてくれた。
私は最敬礼で感謝を伝え、それを受け取る。
しかし、マルコの顔が優れない。「カーリーじゃん。私はストレートのやつが欲しいの」と。
その場で仲居さんに確認すると、もうこのヘアーアイロンしかないという。
私は「大丈夫です。申し訳ありません。ありがとうございます」とすぐに返却した。
ーーマルコの顔が優れない。
「Range. I wanna go to MALL. (レンジ。モールに行きたい。)」
私はその言葉に耳を疑った。
あまりの衝撃に、耳からシイタケでも生えたのかと思った。
「Range. Please look it up. (レンジ。調べてみて。)」
ここは温泉街だぞ。付近にあるのか? しかも夜の9時前だ。フィリピンでもモールは閉まる時間だろうに。
私は「もう閉まってるよ」と少し食い下がった。
すると、マルコは「確かにね。ここは日本だし」と。
珍しく聞きわけの良い子のようで、少し寂しそうな表情を見せた。
女性にそんな表情を見せられると、私はじっとしていられない。
よっし。
グーグルマップで『ショッピングセンター』を検索した。
すると、絶妙な位置にモールを発見してしまった。
『エコール・リラ ショッピングセンター』
ここから約6km離れたところ、車で8分だった。
「Okay! Let’s go! (わかった! 行こう!)」
ーー私はマルコを車に乗せ、二人でショッピングセンターに向かった。
マップによると、到着予定時刻はちょうど9時ころ。
助手席の彼女は鼻歌を歌っていた。
この時の私のモゲ具合はMAX。
もし、これでヘアアイロンが手に入らなければ、私はモゲ死ぬだろう。
ーーそして、ショッピングセンターに到着。
明かりは点いていたので、もしかしたら……。
期待を込めて駐車場へ車を留め、中に入る。
ダメだ、やはり閉まっていた。
「I’m very sorry. Alredy closed. (本当にごめん。もう閉まってるよ。)」
彼女の『Anymore』を覚悟した。
「..It’s okay. Thank you so much for your effort. (……大丈夫よ。頑張ってくれてありがとう。)」
えっ!?
肩を落としてはいたが、優しい時のマルコだった。
ーー帰りの車内、会話は弾んだ。
彼女は私の奮闘を良く理解していると言う。いつもいつも私を試しているのだと。
そして、今回のことはさすがにマルコも『やり過ぎ』だと感じていたらしく、逆に謝られた。
おっ、おう。
この態度の急変がなんだか怪しい。台風の目にでも入ったのだろうか。
また、今後の予定を話していると次第に二人で大笑い。明日は私の仕事のため一旦名古屋に滞在することになっている。
「I’m sooooo excited! Coz finally, I can visit your hometown! (超テンション上がるぅう! だってやっとあなたの街に行けるのよ!)」
彼女は、私が住む日本の街に訪れることを本当に楽しみにしていたらしい。
そして私のために、髪形とファッションを完璧にしたかったのだと言う。
なるほど。
……可愛いやつめ。
「Let’s stop Japanese motel? (日本のラブホに寄る?)」
「Yeah Let’s go haha! (ええ行きましょう、ははっ!)」
私達は冗談を言いながら、まっすぐ旅館に戻った。
ーー部屋に戻ると、母親は洗面台で洗濯していた。
「外は寒かったでしょう。お疲れ様」と声を掛けてくれる。
確かに外に出て、体が冷えた。
マルコはもう一度温泉に行ってくると言う。
私はテレビの続きを見て過ごすことに。
ーーしばらくしてマルコが戻ってきた。
さて、寝ようか。私も歯磨きをして寝支度をしよう。
しかし凪はここまでだった。
台風の目が通り過ぎたようだ。
風呂上がりのマルコが「お腹空いた」と言う。
おっ、おう……。
でしょうね。
夕食はほとんど食べてなかったので当然だろう。
それ、さっき車で帰ってくるまでに言ってほしかった。何軒かコンビニを通り過ぎただろうに。
今夜は諦めろマルコ、腹が減ったまま寝るんだ。
私はもう動きたくない。マジで熱っぽいし。
しかし、彼女の要望は容赦ない。
「I wanna eat ice cream. Haagen Dazs very popular in Japan. I remember Seven-eleven on the road.(アイス食べたい。ハーゲンダッツ、日本で人気でしょ。道にセブンがあったでしょ)」
クソッ、どこで調べてきたのだ。
ハーゲンダッツだと? ガリガリ君で十分だろ。
……それはつまり「私に今から買って来い」と言うことだな。
そう言えば、温泉街の下に一軒セブンイレブンがあったはずだ。
ここから徒歩五分圏内なら許せるか。
私は浴衣の上にダウンジャケットを羽織り、一人でコンビニへ向かった。
ーーマルコが好きなのは、抹茶フレーバー。あと一応、バニラとチョコチップも買っておこう。三人分だ。
戻って、これ以上文句を言われると私は崩壊する。
うーっ、寒いっ!
私は駆け足気味でホテルへ。
ーー部屋に戻ると電気は消えていた。
マルコと母親は速攻で就寝していた。
私は黙って寝室の扉を閉め、アイスを冷凍庫に入れた。
同時に、この夜二回目の汁が頬を伝った。
気を紛らわせてから寝ようと、しばらくデスクワークする。
ーー寝る前、トイレに行くと床がビシャビシャになっていた。
おそらく母親がウォシュレットの使い方がわからなかったようだ。
しかも、窓の枠に二人の下着が並べて干されていた。
「色気もクソもないな……」
私は極力、彼女らの下着を見ないように用を足した。
ーー寝室に入り、爆睡のマルコの横へ。
その向こうには母親。
三人、川の字で寝る。
さぁ、明日は名古屋だ。
……そう言えばマルコたち、日本のピンパブにも行ってみたいって言ってたなぁ。
ここまでとは…レンジさんの頑張りに拍手???
フィリピーナは男を試していますね。追いかけられたい、女王様気取りなんでしょう。情熱的に愛すようなタイプもいますけど、こちらが疲れますしね、、
男は女性の自由さに振り回されてナンボ。運命の人なんて突然現れます。
尽くすだけ尽くして絶頂期の時に捨ててしまえば良いのです。そうすれば尻尾を振ってついてきます。
完全に南から来た台風ですね。恐ろしい笑
母親のところはちょっと感動しました!
私もいつかはフィリピンの彼女を日本に招きたいなと思っています。レンジブログで勉強しています。マルコさんほど自由ではなく比較的真面目な子なんですが、考え直します笑
フィリピンへはボラカイでのダイビング免許取得で一度行きました!
クレイジーマニラを読んで、記事が本当に面白くて!
最近マニラに興味が出て来ました。
止めた方が良いのではと周囲には言われ…悩んでいます。
恋は盲目、アツくなった方が負け… よく言ったものですね
三章は特に大作ですね!1話1話が読み応えあり、レンジワールド最高です。名古屋の話も楽しみです!
おっさんが恋愛に燃える、一生懸命になる。素晴らしい事じゃないですか。
何歳になっても女性を追いかけていたいものです。お金では無いのです。
ただし皆さん、レンジさんの事例はぶっ飛んでいます。読んで楽しむだけにしましょう笑
神戸在住 すべての旅程が手にとるように解ります・・・ 有馬からエコール・リラ ローカル過ぎて涙がでますw 近くのエディオンは閉まってたんでしょうね ご武運を!
人生は短い。
死ぬまで思いっきり楽しめば良い。
私はレンジさんを応援したい。