クレイジーマニラ 駐在員のエピソード

 

 [エッジブログ前回のあらすじ]

エッジは、アジアの担当者として台湾への出張で忙しい日々を送っていた。突然上司に呼ばれ、「これからフィリピン駐在でよろしく」と言われる。周りの同僚はニヤニヤしていた。
【エッジブログ1】台湾担当から、いきなりフィリピン駐在決定!?

クレイジーマニラの記事は、実際の旅行や取材を元に記述しています。小説風のストーリ仕立てで記述していますので、過去の記事を参照頂けると話の内容が理解しやすいかと思います。また、登場人物の名前等は仮名を用いているところがあります。

 

※クレイジーマニラでは現在まで、以下の四つのブログがメインコンテンツでした。

 

上記に、今秋『エッジブログ』が新しく加わりました。

内容は全く新しい連載物で、他ブログとは別ストーリーになります。

 

それでは、エッジブログ第2話をスタートさせていただきます。

 

 

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【エッジブログ2】マニラ駐在先のボス登場、夜遊び相棒との出会い!

 

 

ーー初フィリピン、初日。

 

何の準備もせず成田発の鶴のマークの午前便に乗った。

機内では速攻で爆睡し、マニラ上空を低空飛行している辺りで目を覚ます。

窓の外を見ると全体的に色々な暖色系の屋根が敷き詰められている感じだ。

見るからに暑そうな雰囲気である。

思いのほか高いビルが見当たらない気がした。

 

マニラの街並み
[マニラ上空(写真はイメージ)]

 

まだ、ここがどれくらい暑いかわかっていなかったが、覚悟を決めなければと思うほどに天気も良かった。

 

ーー南国の空港にタッチダウンし、空港のビルに飛行機がゆっくり近づいていく。

目の錯覚かもしれないが蜃気楼が立ち上っているようにも見えた。

 

ーー駐機場に停まり、乗客が急いで降りる準備をしている。

何なら停まると同時にドアの前に並び始めている。

なぜだ?

この時はその人々のせわしない雰囲気が疑問だった。

 

降りてイミグレに向かうとわかったことだが、すこぶるざわついた感じで激混みなのである。

他の到着便とも重なり全体的に阿鼻叫喚状態であった。

 

マニラ空港 イミグレの混雑
[マニラ空港イミグレーション(写真はイメージ)]

 

それより堪えたのは、空港ビルの暑さだった。

ビル内なのだが、暑いのだ。空調が入っていない。

そして電気がほぼ消えている。

そんな中、到着した乗客を歓迎するため音楽隊が地元の楽器で演奏してくれているのだが、暑さで早く抜けたいと思う乗客は演奏など聞いちゃいない。

足早に前を通過していく。

立ち止まって聞いてくれるような入国者はいなかっただろう。

 

ーー後から分かったのだが、この頃、マニラに限らずフィリピンでは『計画停電』ということが普通に行われていて、日中はほぼずっと停電している時期だった。

 

これは私が赴任して帰任するまでずっと変わらなかった。

大きなビルや商業施設は自前の自家発電装置を駆使し電気を供給していたが、小さなところや官公庁はあっても扇風機ぐらい。

エアコンなんてありえない世界だった。

自家発電を街中であっちでもこっちでもぶん回しているので、空気の悪さは史上最悪と言ってもいいくらいだった。

 

『空港って人を迎え入れる場所でしょ? 空調くらい入れてよ!』と強く思った記憶がある。

 

ーーイミグレを通過し、関税部門を過ぎ、さて、いよいよマニラだ。

よくわからないが、やたらとチップをせがまれる。

最初はこんなものなのかと思っていたが、途中から正直鬱陶しくなってきた。

 

ーー空港ロビーに出て先に進むと、ビルの2階にあたるエントランスへ出た。

すると同時に一気にすごい熱気に包まれる。

汗が噴き出てくる。

この暑さは初体験であった。

あと何かわからないが、甘い感じの南国特有の匂いがする。

 

マニラ空港 ターミナル出口
[マニラ空港内(写真はイメージ)]

 

そして遠巻きにこちらを窺う人の目。

出迎えロビーの中に入ることを許された人たちだった。

好奇心なのか出てくる人をじっくりと見ている。

『ここまで見るものなのか?』かなり異様な雰囲気に満ち溢れていた。

またすごい声で話し掛けられるが、「いらない、いらない!」と手を振りながら先に進む。

 

ーー私は、現地事務所のボスに言われた通り、待ち合わせ場所へ。

まず、エントランスから横断歩道を渡り、その先のカーブしたスロープを左に降りる。

そこで迎えを待つ。

ここでも道を挟んで反対側にはフェンスがあり、そこには鈴なりの人だかりができていた。

 

ーーしばらく待っていると、見覚えのある顔が姿を現した。上司の『ボス(名前の通り)』。

ビジネス用の『バロンタガログ』という正装を着ていた。

 

ちなみにこの『バロンタガログ』、私も後に何着か買うのだが、すこぶる楽な服装だ。

完全なる正装だとバナナやパイナップル繊維を原料にした生地を使って作るのだが、ビジネス用はもう少しラフで構わない。麻や綿で作られている。

ネクタイもしないでバロンタガログの下はTシャツで済む。

しかし、生地が薄いので無地の白Tシャツでないと透けて安っぽく見えてしまう。

間違ってもローリングストーンズのTシャツなんか着てはいけない。

それでいて急にフォーマルな服装が必要になってもそれで出席できる。

そして現地でのビジネスでも掴みとしては最初は都合がいいのだった。ちょっとフィリピン好きに見られたりする。

 

ーーボスが嬉しそうに声を掛けてくれる。

 

バロンタガログ フィリピン民族衣装 正装
[バロンタガログを着たボスの似顔絵]

 

「エッジ君、久しぶりだね。大変だったね、今回は。疲れた?」

「まぁ、それより暑さですよね」

「ははっ、しょうがないよ。こればっかりは。じゃあ、事務所へ行こうか」

 

道中、ボスから事務所の置かれている状況の説明を受ける。

 

が、眠い。

寝落ちしそうになる。

前日からの疲れ…… いや、最たる原因の一つは渋滞だった。

空港を出ると凄まじい渋滞に捕まった。

当時、距離感がわからなかったが、『今日中に事務所に着かないんじゃないか』と思ったほどだ。

 

ーーやっとの思いで事務所に到着。

思いの外、立派なビルの中にオフィスを構えていた。

当時、耐震設計されている唯一のビルだったとか。

事務所に案内されると、そこには若いお兄さんがポツンと椅子に座っていた。

他の現地社員は出払っていていたので、彼と女性事務員が数名だった。

彼は工事事務所の人事担当だった。

若く細面で眼鏡をかけ、そう、ウルトラマンのような見た目だった。

後々、一緒に夜な夜な遊びにいく仲間との出会いでもあった。

 

フィリピン駐在 仲良し
[同僚ウルトラマンの似顔絵]

 

彼が今日、私をプロジェクト事務所に案内するつもりだったらしいのだが、私が渋滞に巻き込まれ到着が遅れたので明日朝ホテルに迎えに来てくれることになった。

そういえば、私はどこに泊まるのかな?

 

ボスは、

「事務所の斜向かいにあるマンダリン・オリエンタル・ホテル・マニラだよ。古いけど近くだし、私の前任者は赴任中そこに住んでいたよ」

と言われた。

しかし、『まだチェックインしてないしどうするんだろう……』と思っていたら、

 

「予定が狂ったからね。とりあえず、エッジさんチェックインしてきていいよ。チェックインしたら夕飯までホテルで待機してて。仕事片づけたらみんなでご飯に行こう!」

 

というわけで、チェックインしにホテルに向かう。

 

ホテルは道を挟んですぐのところにあり、すぐにチェックインすることができた。

上から見ると正三角形の三角柱の形をしたホテルであった。上から見てはいないが。

 

1階入口に小さなフロントレセプション。

その奥というか建物の中央辺りにちょっとしたラウンジがあり2階まで吹き抜けになっている。

さらにその先には小さなショップが数件並んでいた。

 

ーー部屋に入り荷解きをして、夕飯時が何時なのかわからないが2時間程ありそうだったのでちょっと休むことにした。

 




 

ーー夕方、ホテルの部屋の電話が鳴り起される。

あれから2時間ぐらい経っている。ボスからの電話だった。

「今から迎えに行くのでロビーで待っていて」とのこと。

 

準備してロビーで待つこと30分。ボス到着。

 

「ごめん、ごめん。渋滞でこっちに回るのに時間かかっちゃった。行こうか!」

 

確かに。ここの渋滞は本気でヤバイ。

さて、メシってどこ行くんだろ?

 

「いきなりお腹を壊されてもショックだろうから、地元料理は赴任してからにしよう」

 

壊すの確定なの?

あれ?

もう赴任するのオレで確定なの?

 

「エッジさん、当り前じゃない。赴任しないかもしれない人を出張で寄こすわけないじゃん」

 

ですよね。ごもっともです。

食事会場では他の社員さんとも合流するとのこと。いろいろと紹介を受けるのだろう。

 

そして気になる夜の部……。

食事の後は、初フィリピンで初夜遊びだろうか……。

 

 

[エッジブログ第2話終わり]

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次回、エッジブログ第3話「初フィリピン、初夜遊び、そして二日目」

 

 

オノケン
クレイジーマニラ ライター オノケン
エッジさん、お疲れ様です! 私も初フィリピンを思い出します。時代は異なりますが、あのゲートから見てくる現地の人たちの目線が強烈でした!

 

レンジ
クレイジーマニラ ライター レンジ
エッジさん、お疲れ様です! なんだかワクワクしてきますね。これからどんな展開になっていくのでしょうか! 初心に返って読ませて頂いております!

 

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エッジ
ひょんな事からフィリピンと関わることになって早30年弱、当時はまだ20代でしたので今はすっかりおじいちゃんです。だいたい90年代前半から2000年頃にかけてのお話です。立場も含め色々制約のある中での元駐在員の珍道中を見ていただけたらと思います。よろしくお願いします。ウメさんとかぶる部分も多いかと思いますが視点を変えて書ければと思っています。皆さん、よろしくお願いいたします。

16 コメント

  1. エッジサン こんにちは♪

    エッジサンのおっしゃる通り 90年台当時ニノイアキノ空港のイミグレは べらぼうに混んでいましたね。1時間位待たされるのは ざらだったと思います(^o^;)
    空港建物も大変古く 「これが国際空港?」と思いました。
    嫁が初めて成田空港に着いたときの第一声が「空港可愛い❤️」でした。また成田から都内へ移動中も「日本 綺麗♪」でした。
    「あぁ こんな感じで 日本は金持ちって思われるんだなぁ」と感じてました。

    エッジサンの 国際試合連勝報告をお待ちしております( ☆∀☆)

    • ryokunさん、
      コメントありがとうございます。

      あの空港には面喰いましたw 雰囲気は国内線の延長線上にある感じの空港でしたからね💦でも、空港から出てからのマカティまでの渋滞もビックリでしたけど(^-^;東南アジア圏の他の国でもあそこまでひどくなかったと思います。

      国際試合は『慎ましやかに大人しく』がモットーです🤣

      これからもよろしくお願いいたします。

  2. エッジさん初めまして。
    衝撃の1話が明けて、駐在員らしい(マンダリンホテル暮らしなど)話がスタートしましたね。私は95年にマレーシアへ長期出張しましたが、お国柄か?もう少し良い環境でした。
    しかしながら、同時期のマニラ駐在員は映画の様な"塀に囲まれたエリア"に住んでおり、羨ましい事を言ったら『それぐらいアブナイ国なんだよ!』と言い返されたのを思い出しました。(そう発言した先輩は、奥さんが女性関係を危惧し、会社へ日本帰国を直訴して連れ戻されました)
    当時は今以上に貨幣価値が違ったと思うので、エッジさんも良い思いをしたと推測します。次話以降も楽しみにしています。

    • みちをさん、
      初めまして。コメントありがとうございます。

      同じ頃マレーシアだったんですね。マレーシアは穏やかな国のイメージがあります。

      フィリピンは多分今もでしょうけどあまり治安は良くないかもですよねw ビレッジといって塀に囲まれたエリアは確かに安全圏でしたね。日本から来た家族連れはあちこちのビレッジ住まいが多かったですね。私の様な独身者や単身赴任者はコンドミニアム住まいでした。

      実はいい思いをした駐在員は私の2代ぐらい前までですかね?社内でも色々システムの見直しがあって締め付けが厳しかったです(^-^;

      これからもよろしくお願いいたします。

  3. お疲れ様です。エッジさん
    初フィリピン …私は空港や街並みを見て旅行者だけど不安しかなかった記憶があります。
    赴任するとなると、すごい不安に駆られそうですね。
    しかし、1度夜遊びを経験すると、日本にはない楽園がそこにはありますねw

    • ミルコさん、
      コメントありがとうございます。

      不安半分、期待半分って感じでしょうかね😆けっこう勢い着けて赴任させられたので、身をもって体感するしかないな、なんて思ってました。かなり行き当たりばったりですw

      夜遊びも実は潜れば潜るほど危険と背中合わせでしたから、楽園の入り口が地獄への一本道ということも人によってはあったみたいですよ?!🤣

      これからもよろしくお願いいたします。

  4. エッジさん、バロンタガログで出迎えて下さるボスさんって、きちんとされた方ですね。
    バロンタガログで思い出しましたが、僕とサラの結婚式の時、サラの母親の弟夫婦を二ノン、ニナンに建てたんですが、今ではパパゴッドと呼ばされている二ノンのおっさんは、バロンタガログなんか着ること無く、ふつーのシャツで二ノンの挨拶をしていたのを思い出しましたw

    • ミカエルさん、
      コメントありがとうございます。

      バロンタガログは吊るしの安い奴でもちょっとフォーマル感が出て使い勝手いいんですよ。でも、結婚式で普通のシャツってカジュアル感満載ですねw

      ボスは真面目な人でしたからね。羽目を外すととことん行っちゃう人なんですけどね🤣

      これからもよろしくお願いいたします。

  5. エッジさんこんばんわ!
    現地への初渡比のイメージは自分もエッジさんと同じような感覚でした。
    ですが自黒というのか、昔から日本人に見られないことも多かったので、
    チップをせがまれることも少なかったです!
    それにしても、会社の人の対応、確かにその通りなのですが、面白い!!
    展開が早い会社の部署でとても面白いですね!!

    • toshidesuさん、
      コメントありがとうございます。

      フィリピンに行くまで、実は私は色白でして香港なんか行ったらガイドブックを片手にキョロキョロしているのに地元の人に広東語ですっごい親しげに話しかけられて日本人とわかると死ぬほど引かれるというナゾのディスられ方をされてましたw

      もしかしたらフィリピンでも香港から来たヤツぐらいに思われていたのかもしれません🤣

      会社の対応はとりあえず型にはめちゃえ!って感じだったんだろうなぁと思ってます😆

      これからもよろしくお願いいたします。

  6. エッジさん初めまして、
    私は初フィリピンは1997年でした。
    奥さんがフィリピン人のベテランさんに連れられての遊びでしたが、
    空港着いたら、中に入れない現地人が金網に沢山しがみついていたのが強烈に印象に残ったます、
    今は無きラマダに泊まりました。
    置屋のお嬢返す時、Gパンツ買って欲しいと言われ、隣のロビンソンで買ってあげました。

    なんでGパンツ欲しいのって聞いたらスカートでタクシー乗ったらレイブされるって言ってました。

    なんて国なんだとビックリした事を覚えています、
    これからも楽しみにしています。

    • ボンさん、
      はじめまして。コメントありがとうございます。

      97年だと私はすでに帰任してましたね。でも、なんやかんやでフィリピンには仕事とプライベートで出入りしていましたw というか香港返還あたりはフィリピンに長期出張とかザラでした。いいのか悪いのか🤣

      そうですね、あの当時、女の子たちはタクシーでのレイプを警戒してましたね。実際まあまあの数の事件が起きてましたから。スカートをはきたがらないという男からすると目の保養ができない残念なことがありましたね(^-^;

      だいぶ改善されたとは思いますけど今はどうなんでしょうね?

      これからもよろしくお願いいたします。

  7. こんにちは

    マニラの渋滞は私も初っ端から洗礼を受けました。

    ホテルに向かう車内で辟易となり二度と来ないと誓ったのですが、、、

    これから夕食ですね。楽しみです。。

    • 鳩麦茶さん、
      コメントありがとうございます。

      少しの距離の移動でもすごく時間がかかるというすごく効率の悪い状況でしたね。

      夕食ではまぁ色んな人が参加してましたけど、まとめると濃ゆい人の集まりでした🤣

      これからもよろしくお願いいたします。

  8. エッジさん、こんにちは。
    いよいよ初フィリピンですね。
    確かにあの暑さと独特の臭い、南国に来た感満載です。
    で、何より渋滞!!!。ホテルに着く前に疲れちゃいました。

    さあ、夕食から夜遊び・・・頼もしい?先輩と相棒が居ることだし
    いきなりの快進撃、楽しみにしています。

    • G1Rさん、
      コメントありがとうございます。

      最初は渋滞からの会食とまぁまぁ疲れがたまる感じでしたねw 先輩も同僚もすでにこっちに慣れているのかマイペースでした。

      快進撃するんですかね~🤣

      これからもよろしくお願いいたします。

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